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甲状腺の病気

バセドウ病

バセドウ病は、甲状腺に対する自己抗体(抗TSH受容体抗体:TRAb)が出現し、それが甲状腺を刺激することによって甲状腺ホルモンの分泌が過剰となる病気です。
甲状腺の腫大、頻脈、動悸、手指の震え、食べてもやせる、息切れ、下痢、周期性四肢麻痺(手足に力が入らない)などの症状が現れます。
眼球突出が見られることもあります。甲状腺ホルモン過剰な状態が続いた場合、心臓に負担がかかって不整脈が起こりやすくなり、心不全に至る場合もあります。
治療方法は、甲状腺の働きを抑制する薬(抗甲状腺薬)の服用が第一選択です。抗甲状腺薬には、白血球減少症や肝機能障害など、重篤な副作用が起こる場合があるので注意が必要です。内服治療で軽快しない場合や早期の寛解を希望する場合などには、放射線ヨウ素による治療や手術療法が行われます。
バセドウ病と区別しなければならない重要な病気の一つが無痛性甲状腺炎です。無痛性甲状腺炎は、甲状腺内に蓄えられている甲状腺ホルモンが何らかの原因で血液中に漏れ出し、一時的に甲状腺ホルモンが過剰になる病気です。ホルモン合成が活発になっているわけではないので、この場合は甲状腺機能亢進症ではなく、破壊性甲状腺中毒症と呼ばれます。
自然に良くなる病気ですので特に治療の必要はありませんが、甲状腺ホルモン過剰による症状が明らかなときは、脈を抑える薬を使用する場合があります。間違ってバセドウ病と診断され、抗甲状腺薬が処方されてしまうことがあるため、鑑別診断をきちんと行うことが重要です

橋本病

橋本病は甲状腺に慢性的な炎症が起きる病気で、慢性甲状腺炎とも呼ばれています。
甲状腺機能低下症の原因となりますが、すべての患者さんが機能低下症になるわけではありません。橋本病は、甲状腺の腫大および甲状腺自己抗体(抗サイログロブリン抗体:TgAb、抗TPO抗体:TPOAb)の両者あるいはどちらかが高値であることによって診断します。
したがって、甲状腺機能に異常があるかどうかは、橋本病の診断には必須ではありません。つまり、甲状腺機能正常の橋本病もあり、むしろそのような患者さんのほうが多いというのが現状です。甲状腺機能が正常の場合には症状は出現せず、治療の必要もありません。
甲状腺機能が低下すると、疲れやすい、だるい、寒がり、むくみ、皮膚の乾燥、便秘、無気力、眠気、体重増加、抜け毛、声のかすれなどの症状が出現し、血液検査ではコレステロール値の上昇が見られます。そのような場合には治療が必要であり、甲状腺ホルモン剤を服用してホルモンの補充を行います。
また、ヨウ素の摂取には注意が必要です。ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料となるものですが、摂取しすぎると甲状腺ホルモンの分泌を抑制してしまいます。ヨウ素を多く含む海藻類を過剰に摂取すると、甲状腺機能低下症の原因となる場合があります。特に昆布には多量のヨウ素が含まれているので、過剰に摂取することは避けたほうがいいでしょう。 女性の場合、妊娠時には甲状腺ホルモンの必要量が増加すると言われています。特に妊娠初期の不足は胎児に影響を与える場合があるので、甲状腺ホルモン剤を服用している妊娠中の女性には量を増やして処方することがあります。

亜急性甲状腺炎

亜急性甲状腺炎は、風邪など上気道炎の後に生じることがしばしばで、ウイルス感染が原因ではないかとされていますが、正確な発症の仕方は不明です。遺伝的要因も考えられています。全甲状腺疾患の約5%の頻度で、男女比は1:10と女性に多く、6月~9月の夏季の発生が多く発症します。
甲状腺の部分的な痛み、発熱症状、甲状腺中毒症状(動悸、頻脈、体重減少、発汗過多、手指の震えなど)が生じますが、気づかずに自然治癒することもあります。軽症では消炎鎮痛薬で経過観察をします。症状が強い場合は、ステロイド療法を行います。症状がある場合は脈を抑える薬を併用することもあります。
発症後の甲状腺機能は、甲状腺中毒症→移行期→甲状腺機能低下症期→回復期と変動しますが、通常2~4ヶ月で自然治癒します。永続的に甲状腺機能が低下する場合もあります。その場合は、甲状腺ホルモンを補充します。

甲状腺腫瘍

甲状腺にしこりができる病気のことを、甲状腺腫瘍とよび、良性と悪性とが存在します。
良性腫瘍で最も多いのは腺腫様甲状腺腫(腺腫様結節)であり、次に多いのが濾胞腺腫です。悪性腫瘍には、乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、低分化がん、未分化がん、リンパ腫などの種類があります。最も多いのが乳頭がんであり、甲状腺悪性腫瘍の約90%を占めます。このようなしこりが発生する原因の多くは不明ですが、一部で放射線の影響や遺伝子異常が原因として考えられています。甲状腺にしこりができた場合、首が腫れる、首の圧迫感、ものが飲み込みにくい、声がかすれる、といった症状が現れます。
甲状腺腫瘍の診断には、まず触診によって固さや大きさ、可動性、痛みの有無などを調べます。次に超音波検査(エコー検査)を行い、どのような腫瘍なのかを評価します。場合によってはCT検査やシンチグラフィーなどの検査、病変部位からの細胞採取による病理検査(穿刺吸引細胞診)が必要になります。 。