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セマグルチドは肥満者の減量に有効

こんにちは、本日ご紹介する文献は糖尿病治療に用いられるGLP1受容体作動薬には体重減量効果が期待できますが新しく上市されたセマグルチドはこれまでのGLP1受容体作動薬に比べ減量効果が大きいという内容です。多くの糖尿病治療薬がこれまで開発され患者さんお血糖コントロールは改善傾向ですが一方で患者さんの体重は増加傾向にあります。肥満を伴う糖尿病患者さんに今後こうしたGLP1受容体作動薬が使用されることにより血糖値だけでなく体重減量に対する効果も期待できそうです。

Efficacy and safety of semaglutide compared with liraglutide and placebo for weight loss in patients with obesity: a randomised, double-blind, placebo and active controlled, dose-ranging, phase 2 trial
PM O’Neil et al.   2018 Aug 25;392(10148):637-649.

米国South Carolina大学のPatrick M O’Neil氏らは、BMIが30以上で2型糖尿病ではない肥満成人に、生活指導に加えてセマグルチド、リラグルチド、プラセボを52週間皮下投与し、減量効果を評価するランダム化フェーズ2試験を行い、セマグルチド群の減量効果が有意に大きかったと報告した。

 肥満は公衆衛生上の大問題の1つだ。生活指導のみで減量目標を達成することは難しいため、米国では現在5製品が減量薬として承認されており、それらのうちの1つが、GLP-1アナログのリラグルチドだ。最初は2型糖尿病治療薬として承認され、1日1.2~1.8mgを投与するが、減量を目的として適応が拡大され、リラグルチド3.0mg/日が食事療法や運動療法と併用されるようになった。

 同じくGLP-1アナログで、2型糖尿病の治療に用いられているセマグルチドでも、体重減少効果が観察されている。そこで著者らは、セマグルチドの減量効果をリラグルチドまたはプラセボと比較する二重盲検のランダム化フェーズ2試験を計画し、8カ国(豪州、ベルギー、カナダ、ドイツ、イスラエル、ロシア、英国、米国)の71施設で実施した。

 対象は、糖尿病ではない18歳以上の成人でBMIが30以上あり、Cushing症候群などの内分泌疾患がない人。スクリーニング前の90日以内に5kgを超える体重変動がなく、手術以外の減量方法を試みたことがあるが失敗しており、大うつ病に掛かったことがない人を選び出した。

 参加者は、6対1の割合でリラグルチドと異なる用量のセマグルチドの実薬群にランダムに割り付け、同じ用量を投与するプラセボ群にも割り付けた。セマグルチドの1日の用量は、0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mgの5グループとし、リラグルチドは3.0mgとした。セマグルチドは0.05mg/日から開始して、4週ごとに目標用量まで増量した。なお、0.3mgと0.4mgのグループには、2週毎に増量する急速増量群も用意した。リラグルチドは0.6mg/日から開始して、1週間に0.6mgずつ増量した。薬はあらかじめペン型のシリンジに詰めた形で提供されたものを皮下投与し、同じ用量のプラセボも用意された。

 試験は1週間のスクリーニング期間と、52週間の治療期間、7週間の追跡期間で構成した。参加者は、ベースラインから20週までは2週間毎に、それ以後52週までは4週間毎に受診して、体重とバイタルサイン、有害事象を確認した。食事と運動に関するカウンセリングも4週間毎に実施した。摂取エネルギーは、本人の消費エネルギーの総量より500kcal少ない量を目標とした。運動の目標は、運動の強度は問わずに、1週間に150分以上運動することを推奨した。

 主要評価項目は、ベースラインから52週時点までの体重の相対減少割合とした。2次評価項目は、ベースラインから5%減量達成者、10%減量達成者、体重の絶対変化量、ウエスト周囲径、ウエスト・ヒップ比、BMI、HbA1c、空腹時血糖、血圧、脂質、CRP、SF-36スコアの変化、などとした。

 2015年10月1日から2016年2月11日までに、1111人の候補者をスクリーニングし、条件を満たした957人をランダム割り付けした。平均年齢は47歳で、体重は111.5kg、BMIは39.3だった。52週間の治療期間を完了したのは777人(81%)だった。治療中止は、介入群を合わせた821人中147人(18%)とプラセボ群136人中33人(24%)に発生していた。主な理由は、有害事象(8%)、追跡中の喪失(3%)、参加者の選択(3%)、プロトコール違反(2%)などだった。治療中止とセマグルチドの用量の間には有意な関係は見られなかった。

 52週時点で体重に関するデータが得られたのは957人中891人(93%)だった。体重減少割合の平均は、プラセボ群が-2.3%、リラグルチド群が-7.8%、セマグルチド0.05mg群が-6.0%、0.1mg群は-8.6%、0.2mg群は-11.6%、0.3mg群は-11.2%、0.3mgFE群は-11.4%、0.4mg群は-13.8%、0.4mgFE群は-16.3%で、セマグルチド群には用量依存的な体重減少が見られた。プラセボ群と比較すると、どの用量でも体重減少の差は有意だった。リラグルチド群と比較した場合も、セマグルチド0.2mg群との体重減少の差は-3.83%(95%信頼区間-6.18から-1.49%)で、それ以上の用量群ではベースラインからの体重減少が有意に多かった。

 増量速度が2週おきだった場合と4週おきだった場合の減量への影響を比較したところ、0.3mg群には差は見られず、0.4mg群では差は有意だった。

 52週時点で5%以上の減量を経験していた参加者の割合は、プラセボ群では23%だったが、セマグルチド0.05~0.4mg(4週ごと増量)の投与を受けた参加者では54~83%で、プラセボ群との差はどの用量でも有意だった。10%以上の減量を経験した参加者は、プラセボ群では10%だったが、セマグルチド0.05~0.4mg(4週ごと増量)では19~65%となり、0.1mg以上の用量を投与されたセマグルチド群とプラセボ群の差は有意だった。

 セマグルチド群では、グルコース代謝の指標、BMIや腹囲などに、用量依存的な改善が見られた。0.1mg以上の用量を投与された参加者では収縮期血圧も低下していた。

 最も多かった有害事象は消化器症状で、主に悪心、下痢、便秘などだった。これらの有害事象は用量が増えると参加者の訴えが増加する傾向を示した。0.4mg群に死亡が1例報告されたが、死因は試験参加98日目に診断されたステージ4の卵巣癌の転移と肺炎で、治療とは関連がないものと判定された。

 これらの結果から著者らは、肥満者に食事と運動のカウンセリングに加えて、セマグルチドを52週間投与すると、どの用量でもプラセボに比べ有意な体重減少が見られたと結論しています。