「何となくだるい」「どれだけ寝ても疲れが取れない」「気力が出ない」そんな症状が続いていませんか?それは単なる疲労やストレスのせいではなく、「甲状腺の病気」が原因かもしれません。女性に多い甲状腺の異常は、気づかれにくいまま体調不良を引き起こすことがあります。
目次
■甲状腺とは?体の代謝を調整する重要な器官
甲状腺は、のどぼとけの下にある小さな器官です。体内の代謝活動に大きく関わっており、健康維持に欠かせない存在です。
◎甲状腺の役割
甲状腺は「甲状腺ホルモン」というホルモンを分泌します。このホルモンは、体温の調節、心拍数のコントロール、エネルギー代謝など、生命活動に関わるあらゆる機能をサポートしています。
◎ホルモンバランスが崩れるとどうなる?
ホルモンが過剰になると体はオーバーヒート状態になり、逆に不足すると体がスローダウンしてしまいます。そのどちらも、日常生活に大きな支障をきたす要因となります。
■「全身がだるい」症状の陰に潜む甲状腺疾患
慢性的な倦怠感やだるさは、多くの疾患に共通する症状ですが、実は甲状腺の異常が原因となっていることも少なくありません。
◎甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態です。代謝が異常に高まり、動悸、体重減少、発汗、手の震え、強い疲労感などが出現します。過活動な体の状態が、持続的な消耗につながります。
◎甲状腺機能低下症(橋本病)
甲状腺ホルモンが不足している状態です。代謝が落ち、むくみ、皮膚の乾燥、体重増加、気力の低下、そして強いだるさが続くようになります。まるで「やる気の電源が切れた」かのように感じる方もいます。
◎典型的でない症状も増えている
バセドウ病でも体重が増えたり、橋本病でも痩せていたりと、現代では一見「典型的でない」症状を示す患者さんも多く、自己判断は難しくなっています。
■甲状腺の病気は他の病気と間違われやすい
甲状腺の病気は症状が多彩で、他の疾患と見分けがつきにくいことがあります。だからこそ、見逃されないための理解が必要です。
◎よくある誤診例
「だるさと脈の乱れ」で心臓病と診断されていた高齢者が、実はバセドウ病だったという例もあります。また、うつ病の治療を長年受けていた方が、橋本病の治療で改善したというケースも珍しくありません。
◎血液検査が正確な診断への第一歩
甲状腺ホルモン(FT3・FT4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、自己抗体(TRAb、TPOAbなど)の測定により、甲状腺の状態を正確に把握することが可能です。
■女性に多い甲状腺疾患
甲状腺の病気は女性に多く、特に20〜40代での発症が多いとされています。生理不順、更年期症状と混同されることもあり、注意が必要です。
◎女性ホルモンと甲状腺の関係
女性ホルモンと甲状腺ホルモンには密接な関係があり、妊娠や出産、更年期を通じてバランスが崩れやすくなります。そのため、女性は特に定期的なチェックが大切です。
◎自覚症状が軽くても油断しないで
「疲れやすいだけ」「年のせいかも」と思っている方でも、実は甲状腺に問題があるかもしれません。長期間症状が続いている場合は、医療機関での検査をおすすめします。
■元気を取り戻すためにできること
甲状腺の病気は、適切な治療で多くの場合、症状をコントロールできます。病気と付き合いながら、元の生活を取り戻すことが可能です。
◎薬によるホルモンバランスの調整
バセドウ病にはホルモンの過剰を抑える薬(抗甲状腺薬)、橋本病にはホルモンを補う薬(甲状腺ホルモン剤)が使われます。いずれも医師の指導のもとで継続的に服用します。
◎漢方によるサポート治療
眼球突出や腫れ、そしてだるさといった西洋医学で取りきれない症状に対しては、漢方治療を併用することもあります。あくまで補助的な役割ですが、改善のきっかけになることもあります。
◎食事と生活習慣にも注意を
橋本病では、ヨード(ヨウ素)を多く含む食品(昆布・ワカメなど)の過剰摂取は避けた方が良いとされます。栄養バランスの整った食事と規則正しい生活を心がけることも大切です。
■長引く「だるさ」は軽く考えず、専門医へ
「全身がだるい」「なんとなくやる気が出ない」こうした症状の陰に、甲状腺の病気が潜んでいることは決して珍しくありません。自己判断で放置せず、専門の医療機関で検査を受けてみてください。正しい診断と治療により、健康な生活を取り戻せるかもしれません。