「最近、髪がよく抜ける気がする」「分け目が目立つようになった」そんな悩みを抱えている女性は少なくありません。加齢やホルモンバランスの変化といった自然な理由もありますが、実は甲状腺の病気が隠れていることもあるのをご存知でしょうか?
甲状腺は、私たちの代謝や体温調節に関わるホルモンを分泌する大切な器官です。この甲状腺の機能に異常が起きると、髪の成長サイクルが乱れ、抜け毛や薄毛の症状が現れることがあります。
今回は抜け毛の原因として見逃されがちな甲状腺の病気について、わかりやすく解説します。抜け毛が気になっている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
■女性の抜け毛に潜む病気とは?
年齢を重ねると誰しも髪のボリュームが気になるようになります。女性にとって、髪の毛は自分らしさを表す大切な要素のひとつです。
加齢による自然な変化であればある程度は受け入れられますが、「最近急に抜け毛が増えた」「髪が細くなって地肌が目立つ」といった症状がある場合、ただの年齢のせいとは限りません。
◎加齢やホルモンバランスの変化による抜け毛
閉経にともなう女性ホルモンの減少は、髪にさまざまな影響を与えます。エストロゲンには髪の成長を促す働きがあります。そのため、減少すると毛髪の成長期が短くなり、抜け毛が目立つようになるのです。40代後半から薄毛を感じ始める方が増えてきます。
◎ただの加齢ではない可能性も?甲状腺の影響
年齢やホルモンバランスだけでなく、「甲状腺の病気」が抜け毛の原因になっていることもあります。甲状腺は新陳代謝や成長、エネルギーの調節に深く関わる器官です。その働きが乱れると毛髪の健康にも影響を及ぼします。
■甲状腺と髪の毛の深い関係
髪の毛には「毛周期(ヘアサイクル)」と呼ばれる周期があり、成長期・退行期・休止期の3つの段階を繰り返します。甲状腺ホルモンはこのうち、成長期の持続を助ける役割があります。
◎甲状腺ホルモンが髪に与える影響とは
ホルモンが適切に分泌されている間は、毛根の細胞が活発に働き、健康な髪が育ちます。しかし、甲状腺ホルモンのバランスが崩れると、このサイクルに乱れが生じ、本来よりも早く成長期が終わり、抜け毛が増えることがあります。
◎毛周期(ヘアサイクル)と甲状腺ホルモンの関係
髪の毛は生えっぱなしではなく、一定の周期を経て自然に抜け落ち、新しい毛が生えてくる仕組みです。成長期には毛母細胞が活発に分裂し、毛髪が太く長く成長します。退行期になると細胞の活動が緩やかになり、休止期には成長が完全に止まり、やがて抜け落ちます。
このサイクルが崩れると、毛が十分に成長する前に抜け落ち、結果として「薄毛」や「抜け毛」が目立つようになります。甲状腺ホルモンの異常は、このヘアサイクルのバランスを崩す要因の一つです。
■代表的な甲状腺の病気と抜け毛症状
甲状腺の病気には大きく分けて「機能が低下するタイプ」と「亢進する(過剰になる)タイプ」があり、それぞれ抜け毛の現れ方に特徴があります。
◎甲状腺機能低下症と休止期脱毛症
甲状腺ホルモンが不足する「甲状腺機能低下症」は体全体の代謝が低下し、疲労感、寒がり、便秘など様々な症状が現れます。
この病気では、毛髪の成長期が短縮され、まだ成長途中の毛が早く抜け落ちてしまいます。さらに、髪の一本一本が細くなり、全体的にハリやコシを失っていくのが特徴です。進行すると、眉毛や体毛まで薄くなることもあります。
関係が深いとされるのが「休止期脱毛症」です。これは、ヘアサイクルのうち休止期に入る毛が異常に増えることで、一時的に大量の髪が抜ける状態になります。
◎甲状腺機能亢進症と全体的な薄毛
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される「甲状腺機能亢進症」でも、抜け毛が起こることがあります。体の代謝が過剰に活発になることで、髪の成長リズムも乱れ、休止期へ早く移行してしまうのです。
このタイプの脱毛では、髪が全体的に薄くなる印象を受けることが多く、特定の部位だけが抜けるわけではありません。症状が進行するにつれて、発汗や動悸、体重減少といった他の身体症状も見られるようになります。
◎自己免疫疾患「橋本病」「バセドウ病」と円形脱毛症
脱毛症の中には「円形脱毛症」と呼ばれる、突然一部の髪が丸く抜けるタイプもあります。自己免疫疾患とは、本来は外敵を攻撃する免疫システムが、自分の体の正常な細胞を誤って攻撃してしまう病気です。
甲状腺の組織や毛根がその標的となることで、ホルモンの分泌異常や脱毛が生じます。ただし、円形脱毛症自体は必ずしも自己免疫疾患が原因とは限りません。
■抜け毛の背景には甲状腺の病気が隠れていることも
抜け毛が気になり始めたら、それは体からの大切なサインかもしれません。甲状腺の病気は、血液検査でホルモンの値を確認することで比較的簡単に診断できます。
治療には、ホルモン補充薬や抗甲状腺薬を用いた薬物療法が基本となります。適切な治療を受けて甲状腺機能が正常に戻れば、ヘアサイクルも次第に改善し、抜け毛の症状も和らいでいくことが多いのです。
「もしかして…」と思ったら自己判断せず、ご相談ください。髪の悩みの根本的な原因を見極め、健やかな毎日を取り戻す第一歩になるはずです。あなたの髪と健康を守るために、今できることから始めてみませんか?