朝起きたときに顔が腫れぼったい、夕方になると足がパンパンになる…そんな「むくみ」の症状に悩まされていませんか。
むくみは一時的なものもあれば、体の不調のサインとして現れることもあります。この症状の背景には、甲状腺の病気が隠れている可能性があります。
目次
■むくみとは?体にたまった余分な水分
むくみ(浮腫・ふしゅ)とは、皮膚の下に余分な水分がたまった状態のことです。
◎体内の水分バランスとむくみの仕組み
通常、体の水分は動脈から各組織に届けられた後、静脈やリンパ管を通って再び心臓に戻っていきます。しかし、その循環がうまくいかなくなると、水分が戻らずに皮膚の下に留まり、むくみとしてあらわれます。
◎むくみが起きやすい部位とは
重力の影響を受けやすいため、下半身(ふくらはぎや足首)に出やすい傾向がありますが、朝起きた直後には顔やまぶたにむくみが出ることもあります。
立ち仕事が多い人はふくらはぎに、寝ている時間が長い人は顔やまぶたにむくみができやすい特徴があります。一時的なものであれば問題ありませんが、全身に及ぶむくみが続く場合は、内臓の病気などのサインかもしれません。
■むくみの原因は生活習慣から病気までさまざま
むくみの原因は多岐にわたります。生活習慣によるものもあれば、体内の疾患が背景にあるかもしれません。
◎日常生活に潜むむくみの要因
塩分の多い食事、長時間同じ姿勢での作業、運動不足、睡眠不足、ストレスなどがむくみを引き起こす要因です。筋肉量が少ない方は、血液やリンパ液の循環が滞りやすく、むくみやすい傾向があります。
◎女性に多いホルモンバランスの変化
女性の場合、月経前や妊娠中、更年期など、ホルモンバランスの変化がむくみの一因となります。これは、女性ホルモンに水分を体内にため込みやすくする性質があるためです。
◎病気が原因のむくみに注意
心臓、腎臓、肝臓などの臓器の病気や、特定の薬の副作用でもむくみは起こります。中でも見逃されがちなのが、甲状腺の機能異常によるむくみです。
■なぜ甲状腺の病気でむくむのか
甲状腺は代謝をコントロールする小さな司令塔です。「甲状腺ホルモン」という重要なホルモンを作り出し、血液に乗せて全身に送り出します。甲状腺ホルモンは、体温の維持や脳の働き、内臓の動き、脂肪や糖の代謝など、あらゆる生命活動をサポートしています。
そのため、甲状腺ホルモンが不足すると体の代謝が落ちてしまうのです。血液やリンパの流れも停滞し、水分が体内に滞ってしまい、皮膚の下に溜まることでむくみが生じます。
■甲状腺機能低下症とは?ホルモン不足で体が鈍くなる
甲状腺機能低下症とは、血液中の甲状腺ホルモンの量が必要よりも少なくなった状態です。体の代謝が全体的に落ちてしまいます。軽症では自覚症状が乏しいこともありますが、進行するとさまざまな不調が現れてきます。
◎むくみの特徴と出やすい場所
顔や手足、まぶたに見られやすく、朝方に目立つこともあります。非圧痕性のむくみで、皮膚がゴムのように硬く感じる「粘液水腫(ねんえきすいしゅ)」と呼ばれる状態になることがあります。
◎日常の中で気づきにくい甲状腺機能低下症の症状
むくみ以外にも、さまざまな症状が見られます。日常的な疲れや不調と混同しやすいため、注意が必要です。
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・無気力・疲れやすさ
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・皮膚の乾燥
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・体重増加
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・寒がり
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・便秘
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・動作や話し方がゆっくりになる
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・記憶力や集中力の低下
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・声のかすれ
◎自己チェックすべき症状とは
慢性的なむくみのほか、疲労感、寒がり、体重増加、皮膚の乾燥、便秘などが同時に見られます。女性に現れやすい症状で、中高年の女性では更年期症状と誤解するかもしれません。症状が重なっているほど、状腺機能低下症を疑ってみましょう。
◎なぜ甲状腺ホルモンが減るのか?
いくつかの原因がありますが、多いのが「慢性甲状腺炎(橋本病)」です。橋本病は、自己免疫によって甲状腺が攻撃され、機能が低下していく病気です。中高年女性に多く、無症状のまま進行していることも珍しくありません。
ほかにも、以下のような原因があります。
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・手術や放射線治療などで甲状腺を切除・損傷したあと
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・ヨウ素の過剰摂取(例:昆布やヨード含有うがい薬の常用)
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・出産後の一時的なホルモンバランスの乱れ
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・下垂体や視床下部の異常によるホルモン分泌の低下(中枢性甲状腺機能低下症)
一時的にホルモン分泌が落ち込む「一過性」のものもありますが、ほとんどの場合は慢性的に続く「永続性」です。
■まとめ:むくみの裏に潜む甲状腺のサインを見逃さないで
むくみは日常生活のなかでもよくある症状ですが、その原因が甲状腺機能の低下であることも少なくありません。特に、顔や足だけでなく全身にむくみが出ている場合や、疲労感・体重増加など他の症状もある場合は、甲状腺機能低下症の可能性もあります。
「むくみは疲れのせい」と片付けず、早めに医療機関での相談・検査を受けてみましょう。適切な治療を受ければ、多くの場合は症状の改善が期待できます。まずは、気軽にご相談ください。