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目の病気じゃない? 目が前に出る症状は甲状腺が原因かも


「最近、目が出てきた気がする」「鏡を見ると目の印象が変わった」


そんな変化に気づいて、目の病気を疑う方も多いかもしれません。しかし、その症状、実は“甲状腺”という首にある臓器の異常が関係していることがあるのです。


目が前に出てくるように見える症状は「甲状腺眼症」と呼ばれる病気による可能性があります。今回は、甲状腺と目の関係をわかりやすく解説します。


■目が前に出てきた気がする…その症状、実は甲状腺の異常かもしれません


鏡を見たときに「目が出てる気がする」と感じたことはありませんか?このような変化に気づくと、多くの人は目の病気を疑います。


しかし実はその症状、目そのものではなく、「甲状腺」という喉元の臓器に原因があるかもしれません。


◎目の異常なのに、原因が甲状腺?

甲状腺は首の前側にあり、体の代謝をコントロールする甲状腺ホルモンを分泌しています。このホルモンは、体温や心拍、エネルギーの使い方などに関わっていますが、実は目の奥の組織にも影響を及ぼすことがあります。


◎「甲状腺眼症」という病気について

詳しくは後述しますが、甲状腺眼症とは、体の免疫システムが自分自身の組織を誤って攻撃してしまう自己免疫疾患の一つです。


目の周りにある筋肉や脂肪に炎症が起こり、それによって目が前に押し出されたり、まぶたが腫れたり、目の動きが悪くなったりします。


バセドウ病などの甲状腺疾患に伴って発症することが多いですが、甲状腺のホルモン値が正常でもこの病気になることがあります。


◎バセドウ病や橋本病との関係とは

甲状腺眼症は、特にバセドウ病と関連が深く、患者の約3〜4割に発症します。


甲状腺眼症について 知っておきたいこと | アムジェン株式会社


一方で橋本病、あるいは甲状腺ホルモンが正常な状態でも起こることがあります。甲状腺の病気を診断されていなくても、「目が出てきた」という症状から気づくケースも多く、眼科を受診して初めて甲状腺異常が見つかる場合もあります。


■甲状腺眼症とはどんな病気か


甲状腺眼症は、目の周りの筋肉や脂肪に免疫反応が起き、炎症や腫れが生じる病気です。これにより眼球が前に押し出されたり、まぶたが引きつったり、ものが二重に見えるなどの異常が起こることがあります。生活に支障をきたす前に、早期発見が重要です。


◎自己免疫によって目の周りに炎症が起きる仕組み

免疫が自分の体を攻撃することで、目の周りにある組織に炎症が起きます。バセドウ病にも関係する「TSH受容体」に対する抗体が原因とされ、筋肉や脂肪が腫れ、眼球が前に押し出されてしまうのです。


◎甲状腺ホルモンの異常がなくても発症する理由

この病気はホルモンの量ではなく、自己抗体の影響で起きるため、甲状腺の数値が正常な方でも発症することがあります。症状だけで判断せず、詳しい検査が必要です。


◎発症しやすい年齢や性別はあるの?

40代以降の女性に多くみられますが、男性は重症化しやすい傾向があります。珍しい病気ではなく、年間1,000人に1人程度が発症しているといわれています。


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■甲状腺眼症で起こる目の症状


甲状腺眼症では、目にさまざまな変化が現れます。よく見られるのが「眼球突出」ですが、それ以外にもまぶたの腫れや視野の異常など、日常生活に支障をきたす症状があります。


◎目が押し出されるように出てくる「眼球突出」

よく見られる症状は眼球突出です。腫れた脂肪や筋肉が眼球を押し出すため、見た目が大きく変化します。まぶたが閉じづらくなり、乾燥や角膜の傷につながることもあります。


◎複視や視野の異常が現れることも

眼球を動かす筋肉の動きが制限されると、両目の動きがずれて、ものが二重に見える「複視」が起こります。進行すると視野が欠けたり、視力が落ちることもあります。


◎まぶたの腫れ、引きつれ、ドライアイなども見逃せない

まぶたの腫れや引きつれ、乾燥感も症状のひとつです。とくに黒目の上に白目が見えるような状態(上眼瞼後退)は、目の筋肉の緊張によるものです。


■甲状腺眼症の治療と生活での注意点


甲状腺眼症は、薬による治療だけでなく、生活習慣の改善が重要です。治療法は進行の程度や時期に応じて、薬物治療・放射線・外科的手術などがあります。


◎ステロイドや放射線を使った治療法

活動期にはステロイドを内服または点滴で投与します。効果が不十分な場合はステロイドの大量点滴(パルス療法)や放射線治療も行われることがあります。


◎喫煙・寝不足・ストレスが悪化の引き金に

喫煙は症状悪化の大きな要因といわれています。禁煙に加え、睡眠とストレス対策も重要です。生活を見直すことで症状が軽くなることもあります。


◎炎症が落ち着いた後に必要となる外科的治療

慢性期に入ると、目の突出や斜視といった後遺症に対して手術を行うこともあります。眼窩(がんか:眼球が入っている頭蓋骨のくぼみ)の骨を削って眼球を奥へ戻す「眼窩減圧術」や、筋肉のバランスを整える斜視手術などが行われます。


■見た目の変化で悩む前に。早期発見と相談が大切


甲状腺眼症は、見た目の変化が精神的にも大きな負担になります。「鏡を見るのがつらい」「人前に出たくない」といった悩みから、うつ状態になる方もいらっしゃいます。しかし、早く気づき、専門的な治療を受けることで、見た目も機能も改善できる可能性があります。


目の異変に気づいたら「目の病気」と決めつけず、甲状腺の異常も視野に入れて、まずはご相談ください。「目が出ている気がする」という症状には、身体からの大切なサインが隠れているかもしれません。


清水ヶ岡糖尿病内科・皮フ科クリニック
医師
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