最近、ダイエットもしていないのに体重が落ちてきた。食欲はあるのに体重が減る。そんな変化は、身体からの大切なサインかもしれません。
体重減少は、糖尿病やがんといった重大な病気の初期症状として知られていますが、甲状腺ホルモンの異常でも、同じように「食べているのに痩せていく」という現象が起こります。
今回は急に痩せたときに考えられる病気や甲状腺が原因の場合について、わかりやすく説明します。
目次
■その「急な体重減少」、本当にただの痩せすぎですか?
体重が落ちる背景には、食事量の低下だけでなく、代謝の上昇、消化吸収の不調、慢性疾患による消費エネルギーの増加など、多様な要因が関わります。
食欲が落ちていれば摂取不足が疑われますが、食欲が保たれているのに痩せるときは、内臓や内分泌(ホルモン)系の病気が隠れているかもしれません。
◎ダイエットしていないのに体重が減るのはなぜ?
人の体は、摂取カロリーと消費カロリーが釣り合うと体重が保たれます。食事量が同じでも、代謝が上がれば消費が増えますし、消化管の病気で栄養が吸収されなければ、摂取したはずのエネルギーが身体に届きません。
長く続く炎症やがんなどでエネルギー需要が増える場合も、体重は落ちやすくなります。さらに、体重の約2/3は水分のため、脱水でも一時的に体重が減る点も知っておきたいポイントです。
◎体重が減る仕組みと、エネルギー収支の関係
「食べる→消化吸収→体内で利用(代謝)→余剰は蓄える」という流れのどこかに不具合があると、収支は赤字になり体重が落ちます。体重の変化は、単なる「食べ過ぎ・食べなさすぎ」だけでは語れません。
◎高齢者はリスクが高いことに注意
加齢とともに食欲や味覚が変化し、慢性疾患や服用薬の影響も加わって、体重減少が起こりやすくなります。痩せると筋肉量が落ち、ふらつきや転倒、骨折のリスクも上がります。
栄養不足は免疫力も下げるため、体重の変化は「体力の貯金残高」のサインと受け止め、早めに対策しましょう。
■体重減少の裏に潜む病気|糖尿病・がんだけではありません
「痩せてきた=がん」と連想しがちですが、原因は一つではありません。糖尿病、胃炎や胃・十二指腸潰瘍、慢性膵炎などの消化器疾患、腎臓の不調、肺結核などの感染症、うつ病などの精神的な不調も考えられます。
◎食欲があるのに痩せる場合は要注意
「しっかり食べているのに体重が落ちる」という矛盾は、代謝の過剰亢進や吸収不良が背景にあるサインです。数週間〜数ヶ月で体重が大きく減った場合は、ぜひ一度、医療機関での検査を受けてみてください。
◎体重が減る代表的な原因
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・がん
エネルギー消費を増やし、食欲低下も重なって体重が減りやすくなります。
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・糖尿病
血糖がうまく利用できないため、筋肉や脂肪が分解されて体重が落ちます。
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・消化器疾患
食欲低下や吐き気、腹痛、下痢などが食事量の低下や吸収不良につながります。
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・腎疾患
食欲が落ち、だるさが続き、栄養摂取が減って体重が落ちます。
◎実は見逃されがちな「甲状腺の病気」
甲状腺は首の前側にある小さな臓器で、代謝を左右する甲状腺ホルモン(T3・T4)を作ります。このホルモンが多すぎる、あるいは少なすぎるだけで、体重や体調は大きく変わります。
■「甲状腺ホルモン」が体重を左右する?痩せる人・太る人の違い
甲状腺ホルモンは、身体のエネルギー消費スイッチのような存在です。過剰なら「燃えすぎ」、不足なら「燃えにくい」状態になり、同じ食事でも体重の行方が変わります。
◎甲状腺機能亢進症(バセドウ病)で痩せてしまう理由
バセドウ病は自己免疫の仕組みが関わり、甲状腺がホルモンを作りすぎる状態です。代謝が上がるため消費カロリーが増え、食べても追いつかず体重が落ちる場合があります。
動悸、汗が多い、暑がり、手指の震え、イライラ、筋力低下、下痢気味などが典型的で、首の腫れや目の症状を伴うこともあります。
◎甲状腺機能低下症で体重が増える?その仕組み
甲状腺ホルモンが不足すると代謝が落ち、エネルギーが使われにくくなります。食欲が強くないのに体重が増える、むくみやすい、寒がり、便秘、疲れやすい、気分が落ち込みがち、といった症状が重なることがあります。
体重が増える側の病態ですが、体重変化とあわせて「全身のだるさ」を手がかりに受診につなげると診断が早まります。
◎女性に多い背景と、注意したい年代
甲状腺の病気は女性に多く、とくに20〜30代でバセドウ病が見つかりやすい一方、更年期以降は機能低下症が目立つこともあります。妊娠・出産、強いストレス、感染症などをきっかけに発症することもあるため、体重や体調の変化に敏感でいることが大切です。
■「痩せたから良い」ではなく、「なぜ痩せたか」を確かめよう
意図しない体重減少は、身体からの重要なサインです。6〜12ヶ月で5%以上、または4.5kg以上の減少は受診の目安になります。短期間に急に落ちる場合や、だるさ・動悸・多汗・下痢・のどの渇き・多尿・気分の不調などの症状を伴うときは、早めに医療機関に相談してください。
糖尿病やがんだけでなく、見逃されがちな甲状腺の病気が背景にあるかもしれません。原因を確かめ、適切に治療すれば、体重と体調は改善が期待できます。体重の変化に気づいたら放置せず、まずはご相談ください。