鏡を見たときや、ふとしたタイミングで「首が腫れている」と気づいたことはありませんか?また、首の腫れや痛みは、風邪やリンパの腫れなど一時的なもので済むこともありますが、なかには放置してはいけない病気が隠れている場合もあります。
甲状腺の病気は初期に目立った自覚症状が出ないことも多く、気づかぬうちに進行しているかもしれません。
この記事では、「首の腫れ」や「痛み」がサインとなる代表的な甲状腺の病気について詳しく解説します。腫瘍や良性・悪性のしこりの可能性も含めて、正しく理解しておきましょう。
目次
■首の腫れの原因は?まず考えるべきこと
首には甲状腺、リンパ節、唾液腺、血管、皮膚など、さまざまな組織が集まっています。そのため、腫れの原因は一つではありません。風邪やウイルス感染による一時的なリンパ節の腫れもあれば、慢性的な炎症、腫瘍、甲状腺の病気など、継続的な医療介入が必要なケースもあります。
首の真ん中からやや下、のどぼとけの下に腫れがある場合、甲状腺の腫れ(甲状腺腫)が考えられます。甲状腺の病気は、腫れ以外の症状が出にくいため見逃されやすく、健康診断で初めて気づかれることも少なくありません。腫れが長く続いたり、痛みを伴ったり、しこりが触れる場合には注意しましょう。
■痛みのある首の腫れ…甲状腺が原因の可能性は?
首の腫れに強い痛みや発熱を伴う場合は「亜急性甲状腺炎」かもしれません。これはウイルス感染などをきっかけに甲状腺が炎症を起こし、急に腫れたり、喉の痛みで食事が困難になることもあります。痛みが左右に移動したり、数ヶ月で自然に治ることもありますが、風邪や喉の炎症と誤診されやすいため注意しましょう。
■しこりや腫れ…甲状腺腫瘍には良性と悪性がある
甲状腺に「しこり(結節)」がある場合、腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)、嚢胞、濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)などの良性病変がほとんどです。
ただし、ごく稀ですが悪性腫瘍(甲状腺がん)の可能性も否定できません。悪性腫瘍には乳頭がん・濾胞がん・髄様(ずいよう)がん・未分化がん・悪性リンパ腫などがあります。
急にしこりが大きくなる、声がかすれる、物が飲みにくいといった症状が出る場合には放置せず、医療機関を受診しましょう。
■甲状腺のホルモン異常による症状にも注意
甲状腺の病気は、腫れ以外に体調にも影響を及ぼします。バセドウ病や橋本病が代表的な病気です。バセドウ病では代謝が過剰になり、体重減少や動悸、発汗などが現れます。橋本病では逆にホルモンが不足し、冷え性、むくみ、便秘、疲れやすさなどが目立ちます。
どちらも自己免疫疾患であり、甲状腺が腫れても痛みがないケースも少なくありません。
甲状腺の腫れとともにこうした全身症状がある場合には、血液検査によるホルモン値のチェックが有効です。
■首の腫れを感じたら甲状腺専門外来へ
「首が腫れている」「押すと痛い」などの症状は、甲状腺の病気によるサインかもしれません。甲状腺の病気は自覚症状が少ないものも多く、放置されやすい傾向にあります。「良性か悪性か」の見極めが重要なため、腫れや痛みがある場合は、甲状腺専門の内科や内分泌科の受診がおすすめです。
検査は超音波(エコー)検査、血液検査が中心です。必要に応じてCTや細胞診が行われることもあります。
※当院では、細胞診検査は行っておりません。
必要な場合は提携医療機関を紹介いたします。
診察の際には、腫れに気づいた時期、症状の変化、家族歴などを整理しておくと診断の助けになります。
症状が軽くても、早期発見・早期治療のために甲状腺専門医の受診を検討しましょう。気になる方は放置せず、まずは気軽にご相談ください。