手が震える症状に気づいたとき、単なる緊張や疲労と考えてしまうかもしれません。しかし、その原因には体の重要な働きを担う甲状腺の異常が潜んでいることもあります。
女性に多い甲状腺の病気は適切な対処を怠ると、日常生活に影響を及ぼす恐れがあるため注意が必要です。
今回は手が震える症状と、甲状腺疾患との関係をわかりやすく解説していきます。
目次
■手が震える原因とは?
手の震えはさまざまな原因で起こります。生理的な震えもあれば、神経系の病気や内分泌系の異常が関係することもあります。まずは基本的な仕組みから理解しましょう。
◎振戦とは何か
手の震えは医学用語で「振戦(しんせん)」と呼ばれます。振戦は自分の意思とは無関係に筋肉が反復的に収縮して起こる現象です。
大きく分けて、安静時に出る震え、動作中に出る震え、一定の姿勢を保ったときに出る震えなどがあります。これらのタイプごとに原因となる病気が異なります。
◎手の震えを引き起こす主な原因
生理的な震えは、寒さや極度の緊張、疲労などによって一時的に現れます。
一方、病的な震えは本態性振戦やパーキンソン病など神経の異常による場合や、甲状腺ホルモンの異常による代謝亢進が原因になることもあります。原因によって治療法が異なるため、安易な自己判断は避けましょう。
■手の震えを引き起こす甲状腺の病気とは?
甲状腺の病気は、震えの原因のひとつです。代謝を司る甲状腺ホルモンの異常な増加が、手の震えなどさまざまな症状を引き起こします。
◎甲状腺ホルモンと体の関係
甲状腺ホルモンは体温調節や心拍、エネルギー代謝に大きく関わっています。このホルモンが過剰に分泌されると交感神経が刺激され、体が常に緊張した状態になります。その結果、手が細かく震えたり、動悸や発汗、体重減少といった症状が現れるのです。
◎甲状腺の病気と震えの関係
甲状腺機能亢進症の代表であるバセドウ病や、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎では、甲状腺ホルモンが過剰に血中に放出されるため、手の震えが生じます。これらの病気は放置すると症状が進行し、生活に大きな支障をきたす恐れがあります。
■バセドウ病による手の震えの特徴
バセドウ病は若い女性に多い甲状腺疾患で、手の震えが初期症状として現れることも珍しくありません。
◎バセドウ病とは?
自己免疫反応によって甲状腺が過剰に刺激され、ホルモンを過剰に分泌する病気です。20〜40代の女性に多く、首が腫れる、体重が減る、強い動悸を感じるなどの症状が併発します。発症に気づかないまま進行するケースもあるため注意しましょう。
◎バセドウ病で見られる震え
手を使った細かい作業や、コップを持つなどの姿勢時に目立ちます。震えは細かく速いリズムで続き、安静にしていても完全には消えないのが特徴です。また、同時に動悸や息切れ、汗の増加を伴うことが多い点も重要なサインです。
■無痛性甲状腺炎・亜急性甲状腺炎でも震えが起こる?
バセドウ病だけでなく、他の甲状腺の病気でも一時的に手の震えが現れることがあります。それぞれの特徴を理解しておきましょう。
◎無痛性甲状腺炎の特徴
無痛性甲状腺炎は、慢性甲状腺炎(橋本病)に基づく一過性の甲状腺ホルモン過剰状態です。文字通り痛みを伴わないため発見が遅れることもあります。手の震えに加え、動悸や体重減少などバセドウ病に似た症状を示しますが、多くは自然に回復し、治療を必要としません。
※症状によっては脈を抑える薬を使用する場合があります。
◎亜急性甲状腺炎の特徴
亜急性甲状腺炎はウイルス感染を契機として甲状腺に炎症が起こる病気です。首の痛みや発熱を伴い、甲状腺ホルモンの一時的な過剰分泌により手の震えが現れます。治療には消炎鎮痛剤やステロイドを使用することがあり、数ヶ月の経過観察が必要となります。
■手の震えに気づいたら、甲状腺のチェックを
震えが続く場合や、動悸、発汗、体重減少といった他の症状を伴う場合は、単なる生理的な震えと決めつけず、甲状腺の異常も疑ってみましょう。
◎どのようなときに受診すべき?
手の震えだけでなく、心拍数の上昇、疲労感、発汗過多、急な体重減少が重なった場合、内科や内分泌科への受診を検討しましょう。女性の場合、甲状腺疾患のリスクが高いため注意が必要です。
◎甲状腺機能検査でわかること
甲状腺機能検査では、血中の甲状腺ホルモン(フリーT3、フリーT4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値を測定します。異常が見つかれば、早期に治療を始めることで症状の進行を防ぎ、生活の質を維持できる場合もあります。
■まとめ
手の震えは単なる緊張や疲労によるものと軽く考えがちですが、背景に甲状腺の病気が隠れていることもあります。
女性は甲状腺疾患のリスクが高く、震えに加えて動悸、発汗、体重減少などの症状がみられる場合は注意が必要です。
早期発見・早期治療によって、日常生活への影響を最小限に抑えられます。気になる症状がある場合は、迷わず医療機関で甲状腺機能検査を受けましょう。