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甲状腺腫瘍の治療は?甲状腺がんと良性腫瘍に違いはある?手術は必要?


前回の記事では検査や診断について解説しました。今回は診断後の「治療」がテーマです。


「甲状腺がん」と診断されたら即手術なのか、良性なら放置でよいのか、治療方法について分かりやすく解説します。


■「甲状腺がん」と「良性腫瘍」で治療方針はどう違う?


しこりが「良性」か「悪性(がん)」かによって、治療の緊急度や内容は大きく異なります。


◎良性甲状腺腫瘍の主な治療方針(経過観察・薬物治療・手術)

良性の腫瘍や嚢胞(水の袋)であれば、直ちに命に関わることはないため、基本的には手術を急ぎません。半年から1年に1回程度の超音波検査などで大きさをチェックする「経過観察」が一般的です。


ただし、しこりが大きすぎて呼吸が苦しい場合や、首の見た目が著しく損なわれる場合、あるいは腫瘍がホルモンを過剰に出してしまう場合には、良性であっても手術やアルコール注入などの治療を行うことがあります。


◎甲状腺がんの場合の基本的な治療の流れ

甲状腺がんと診断された場合は、手術での切除が基本となります。がん細胞が周囲へ広がったり転移したりするのを防ぐためです。


ただ、甲状腺がんは他のがんに比べて進行がゆっくりなタイプが多く、適切な治療を行えば予後は良好な傾向にあります。過度に恐れず、自分の「がんのタイプ」を正しく知り、主治医と相談して治療計画を立てることが大切です。


◎年齢・しこりの大きさ・広がり方で治療方針が変わる理由

治療方針は「がんがあるから取る」という単純なものではありません。年齢、しこりの大きさ、リンパ節転移の有無などを総合的に判断します。


たとえば高齢の方と若い方では進行リスクの考え方が異なりますし、妊娠希望の有無によっても配慮が必要です。ガイドラインを基本にしつつ、患者さんのライフステージに合わせた適切な方法が検討されます。


■甲状腺がんの代表的な治療「手術」|どんなときに必要?


甲状腺がんと診断された場合の治療の中心は手術ですが、その範囲や方法は状態によって異なります。


◎手術がすすめられる「甲状腺がん」の特徴

がんの確定診断が出た場合、特に周囲の臓器への浸潤やリンパ節転移が疑われる場合は手術が勧められます(微小ながんで積極的経過観察が可能な場合を除き)。手術によってがん細胞をきれいに取り除くことが、基本となる治療法だからです。


◎手術でどこまで取る?甲状腺の一部切除と全摘の違い

がんが広がっている場合や再発リスクが高い場合は「全摘術」が選ばれることが多いです。こちらは再発管理がしやすい反面、生涯ホルモン薬の服用が必要です。


がんが片側にとどまっている場合は、その側だけを切除する「葉切除」が行われます。自分の甲状腺が半分残るため、術後のホルモン薬が不要になるケースもあります。


◎リンパ節郭清とは?必要になるケースと目的

甲状腺がんは近くのリンパ節に転移しやすいため、転移が認められる場合や再発リスクを抑えるために、周囲のリンパ節も一緒に切除する「リンパ節郭清」を行うケースもあります。


◎手術をすぐにせず様子を見る「積極的経過観察」とは

特定の条件を満たす1cm以下の小さな「微小乳頭がん」などでは、あえてすぐに手術をせず、定期検査で様子を見る「積極的経過観察」という選択肢があります。


これらのがんは長期間変化しないことも多いため、不必要な手術を避ける選択として定着しつつあります。もちろん大きくなればその時点で手術が必要な場合もあります。


■手術以外の治療|放射線・薬物療法が必要なケースとは


手術と組み合わせたり、手術が難しい場合に選択される治療法もあります。


◎放射線治療が検討される甲状腺がんとは

進行が比較的ゆっくりながんでは主に手術が中心となるため、一般的な外部からの放射線治療はあまり行われません。しかし、骨や脳への転移による痛みを和らげる場合や、未分化がんなどで局所のコントロールが必要な場合には検討されることがあります。


◎放射性ヨウ素内用療法とは?入院や食事制限が必要な理由

甲状腺細胞がヨウ素を取り込む性質を利用した治療です。放射線を出すヨウ素のカプセルを飲むことで、全身に散らばったがん細胞を内側から攻撃します。主に全摘後の再発予防や転移がある場合に行われる方法です。


効果を高めるためにヨウ素制限食を行ったり、放射線管理のための専用病室への入院が必要になることがあります。


◎進行・再発の甲状腺がんで使われる分子標的薬とは

手術等が難しい進行がんに対しては、がん増殖に関わる分子を狙い撃ちにする「分子標的薬」が使われます。新しい薬の登場により、以前は治療が難しかったケースでも病気の進行を抑えられる方法が増えています。


■術後のフォローと今後の見通し


手術が終わっても、定期的なケアは欠かせません。


◎手術後に続く定期検査と経過観察の内容

再発や転移がないかを確認するため、術後も定期的な超音波検査や血液検査(腫瘍マーカーの確認)が必要です。甲状腺がんは経過が長いため、5年、10年といった長いスパンで根気よく見守っていくことが大切になります。


◎甲状腺ホルモン補充薬が必要になる場合とは

甲状腺を全摘した場合や残った機能が不十分な場合は、ホルモン薬(チラージンなど)を服用して不足分を補います。これは不足した栄養を補うようなもので、適切に飲んでいれば健康な人と変わらない生活が送れます。


■専門的な手術・治療が必要な場合は連携医療機関へ


治療方針は患者さんごとに異なります。当院では診断から術後のケアまで対応していますが、全身麻酔手術やアイソトープ治療など、より高度な設備が必要な場合は、実績のある専門病院を速やかにご紹介します。


患者さんが適切な治療を受けられるようサポートしますので、まずはご相談ください。



清水ヶ岡糖尿病内科・皮フ科クリニック
医師
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