ブログ blog

糖尿病網膜症

こんにちは、本日は糖尿病の慢性合併症の1つである網膜症についてお話ししたいと思います。糖尿病で血糖コントロールが悪い状態が続くと眼の中にある網膜という部分の細い血管が障害され糖尿病網膜症が生じます。網膜症が起きていてもなかなか自覚症状が出てきませんがひどくなると眼底出血や網膜剥離などを生じ視力低下が起きたり失明したりすることがあります。じっさい日本における失明の原因の第2位となっています(1位は緑内障)。では、どのように合併症は進むのでしょうか?

網膜には高血糖の影響を受けやすい細い血管が張り巡らされています。糖尿病ではこの網膜に特徴的は変化が徐々に現れ単純網膜症、増殖前網膜症、増殖網膜症という順番で進行していきます。

①単純網膜症:網膜にある毛細血管が高血糖のためにもろくなります。その結果、毛細血管が瘤のようになったり、毛細血管から血液が漏れたり、漏れ出た血液中のたんぱく質や脂肪の成分が網膜に沈着したりします。この段階では自覚症状は全くなく、また血糖コントロールを良くすると自然に病変が消えていくことがあります。

②増殖前網膜症:毛細血管の障害がさらに進むと毛細血管が詰まって、網膜に酸素や栄養が行き渡らない部分(虚血)ができます。その近くにある血管は拡張や蛇行などの異常を示します。またこの時期になると新生血管とよばれる新しい血管が伸び始める準備段階となります。この段階でも自覚症状はほとんどありませんが、虚血になっている網膜へレーザー光を照射する光凝固術を行い、新生血管が伸びてくるのを防ぎます。この段階でしっかり光凝固を行うことが失明を防ぐために重要となります。

③増殖網膜症:毛細血管が閉塞して足りなくなった酸素を補うために、網膜から新生血管ができます。新生血管はもろくて簡単に破れてしまうため大きな出血を硝子体中に起こしてしまいます(硝子体出血)。新生血管の周りに増殖膜と呼ばれる組織ができて、それが網膜を引っ張って網膜剥離を起こすことがあります。硝子体出血や網膜剥離は、視力低下や失明の原因となります。この段階でも、大きな出血や網膜剥離が起きるまではほとんど無症状です。治療として網膜全体に光凝固を行い新生血管の活動を抑えたり、硝子体出血や網膜剥離がある場合には硝子体手術が必要となります。

その他に、網膜の中の黄斑という物を見るうえで最も重要な箇所にむくみが起きることがあり、糖尿病黄斑浮腫といいます。黄斑浮腫は網膜症のどの段階でも起こる可能性があり、網膜症の状態や硝子体出血、網膜剥離の有無にかかわらず、糖尿病黄斑浮腫があるのみで視力低下が起きる原因となります。

網膜症を悪くしないためには、日頃の血糖コントロールが重要です。また、早い段階で網膜症を見つけておくとレーザー治療などで大きな出血を予防できる場合があります。糖尿病の患者さんは、目の見え方などが正常と思っても、半年~1年に1回は眼科受診をするようにしましょう。