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糖尿病治療薬のカナグリフロジンは心不全の入院を減少させる

こんにちは、本日は糖尿病治療薬のカナグリフロジンが心不全の予防効果があるという文献を紹介します。カナグリフロジンはSGLT2阻害薬という尿中の糖排泄量を増やすことで血糖値を改善させる効果がありますが、その効果とは独立して心不全による入院を減少させたという内容です。循環器疾患では年々、心不全による入院が増加傾向なのが問題になっており糖尿病治療薬ではありますが今後カナグリフロジンやその他のSGLT2阻害薬が糖尿病や心臓に持病がある方に処方されることが多くなると思われます。

論文の詳細は以下を参考にしてください。
Cardiovascular outcomes associated with canagliflozin versus other non-gliflozin antidiabetic drugs: population based cohort study
Patorno E et al.  BMJ 2018;360:k119 

新たに2型糖尿病の治療を開始した地域住民を登録し、SGLT2阻害薬カナグリフロジンと、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、スルホニル尿素(SU薬)の心不全予防効果を比較するコホート研究を行った米Harvard大学医学部のElisabetta Patorno氏らは、心筋梗塞や脳卒中には差が見られなかったが、カナグリフロジンは心不全による入院を減らしていたと報告した。結果はBMJ誌電子版に2018年2月6日に掲載された。

 心血管疾患は2型糖尿病患者の合併症と死亡の主な原因となっている。糖尿病患者では、アテローム性心疾患に加えて、心不全による入院と死亡のリスクが高い。企業の後援を受けた研究では、SGLT2阻害薬が心不全による入院を減らすことが示されているが、どのクラスの糖尿病治療薬が心血管予防に効果的かを直接比較した研究はなかった。

 そこで著者らは、新たに2型糖尿病治療を開始した患者を対象に、米国で最初に発売されたSGLT2阻害薬であるカナグリフロジンと、DPP-4阻害薬(アログリプチン、リナグリプチン、サキサグリプチン、シタグリプチン)、GLP-1受容体作動薬(アルビグルチド、デュラグルチド、エキセナチド、リラグルチド)、SU薬(グリメピリド、グリピジド、グリブリド)を処方された患者と、心血管疾患の予防効果を比較する、後ろ向きコホート研究を計画した。

 約1400万人が加入している米国の民間医療保険データベース(Optum Clinformatics Datamart)を用いて、2013年4月1日から2015年9月30日までの期間に2型糖尿病と診断され、カナグリフロジンや他の3種類の糖尿病治療薬の使用を開始していた18歳以上の患者を選出した。過去6カ月以内に別の糖尿病治療薬を使用していた患者は除外した。2次性の糖尿病、妊娠糖尿病、悪性腫瘍、末期腎疾患、HIV感染、臓器移植の既往がある患者も除外した。

 3種類のコホートを設定し、コホート1はカナグリフロジンとDPP-4阻害薬の比較、コホート2はカナグリフロジンとGLP-1受容体作動薬の比較、コホート3はカナグリフロジンとSU薬を比較することとした。同一の患者は各コホートで一度しか登録しないが、カナグリフロジン使用者は、複数のコホートに参加しても良いこととした。

 追跡期間は、処方開始日から治療を中止するか、他の処方薬に切り替えるまで、主要評価項目に設定されたイベントが発生するまで、死亡するまで、医療保険から脱退するまで、または試験期間終了までとした。ベースラインの患者情報として、人口統計学的要因、糖尿病の重症度、他の併存疾患、他の薬の使用、医療サービスの利用などの共変数に関する情報も収集した。

 主要評価項目は、心不全による入院と、心血管複合イベント(急性心筋梗塞、脳梗塞、脳出血による入院)に設定した。2次評価項目は、複合エンドポイントの各項目、心不全の悪化によるループ利尿薬の使用、安定狭心症、冠動脈再形成術などとした。

 期間中に22万4999人の患者が、対象となる4種類のいずれかの薬剤の使用を開始していた。追跡期間は16万4249人・年になった。カナグリフロジンの使用を開始していたのは3万1725人(追跡期間は1万9352人・年)だった。コホート1は、カナグリフロジン開始者2万1431人とDPP-4阻害薬開始者7万7463人を登録し、この中から傾向スコアがマッチする患者のペアを1万7667組選び出した。コホート2は、カナグリフロジン開始者2万5806人とGLP-1受容体作動薬開始者3万2676人を登録し、患者のペアを2万539組選び出した。コホート3は、カナグリフロジン開始者1万8924人とSU薬開始者11万5435人を登録し、患者のペアを1万7354組選び出した。これら傾向スコアがマッチする患者の追跡期間の平均は0.6年だった。

 コホート1では、1000人・年当たりの心不全による入院の発生率は、カナグリフロジン群が8.9人、DPP-4阻害薬群が12.8人で、ハザード比は0.70(95%信頼区間0.54-0.92)だった。コホート2では、1000人・年当たりの発生率は7.5人とGLP-1受容体作動薬群12.4人で、ハザード比は0.61(0.47-0.78)、コホート3では、発生率は7.3人とSU薬群14.4人で、ハザード比は0.51(0.38-0.67)だった。

 心血管複合イベントのハザード比はそれぞれコホート1が0.89(0.68-1.17)、コホート2が1.03(0.79-1.35)、コホート3が0.86(0.65-1.13)で、差は有意ではなかった。

 これらの結果から著者らは、日常診療で処方される他の3種類の糖尿病治療薬と直接比較したところ、カナグリフロジンは心不全による入院リスク減少に関係していたが、心筋梗塞や脳卒中のリスクには差は見られなかったと結論している。