こんにちは、ジュースなどの加糖飲料は肥満や高血圧、糖尿病の発症を増やすことが知られていますが、今回の文献では100%のフルーツジュースを含めて加糖飲料の消費量が多いとあらゆる癌の発症を増加させると報告しています。
詳しい内容は以下を参考にして下さい。
Sugary drink consumption and risk of cancer: results from NutriNet-Sante prospective cohort
E Chazelas et al. BMJ 2019;366
フランスInsermのEloi Chazelas氏らは、住民ベースの前向きコホート研究を行い、加糖飲料や100%フルーツジュースの消費量が多い人は、何らかの癌を発症するリスクが高いと報告した。
加糖飲料や人工甘味料は、肥満、高血圧、2型糖尿病を増やすことが報告されている。しかし、加糖飲料と癌の関係を調べた研究は少なく、結果も一貫性がなかった。そこで著者らは、フランスで現在も進行中のNutriNet-Santeコホート研究に参加している人のデータを利用して、加糖飲料、100%フルーツジュース、人工甘味料の消費量と、癌の発症リスクの関係を調べることにした。
NutriNet-Sante研究は食習慣と健康の関係を調べるため、18歳以上の成人を対象にして2009年に開始された研究で、インターネット経由でウェブ上の質問票に回答してもらいデータを集める方式を採用している。誕生日、性別、教育レベル、喫煙状態、子供の数、身長と体重、食品摂取頻度、身体活動度、本人の病歴と家族歴、月経の状態、使用薬などの情報を回答してもらっている。また、研究参加施設にボランティアの参加者を招いて、診察を受け、体脂肪率や内臓脂肪の測定を行っている。参加者に起こった健康上のイベントは、健康保険データベース(SNIIRAM)やフランスの死亡登録とリンクさせて、突き止めるようにした。
食事のデータは、ベースラインの後も6カ月ごとに調査し、ランダムに選んだ平日の2日と週末の1日、合計3日間の食事内容を回答してもらっている。飲み物については97種類の加糖飲料(100%フルーツジュースを含む)と、12種類の人工甘味料を使用した飲料を対象にして、どれくらい飲んでいるかを回答してもらった。
この研究では、2009~17年に参加した、ベースラインで癌を発症したことがない10万1257人を追跡対象に選び、最初の2年間の食事調査のデータに基づいて各個人の加糖飲料の消費量を算出し、その後の癌のイベントを追跡することにした。参加者は加糖飲料の消費量に基づいて四分位群に分類した。
主要評価項目は、あらゆる癌と、このコホートの地域に多い癌である乳癌、前立腺癌、大腸癌の発症と加糖飲料の消費量の関係とした。補正する共変数は、年齢、性別、アルコールを除くエネルギー摂取量、他の食品に含まれる糖分、飲酒量、塩分、果物と野菜の摂取量、BMI、身体活動度、喫煙、1日の食事回数、癌の家族歴、教育レベル、ベースラインの健康状態(2型糖尿病、高血圧、心筋梗塞や脳卒中歴、脂質異常とした。乳癌の解析ではさらに、子供の数、閉経状態、ホルモン補充療法、経口避妊薬も加えた。
10万1257人の参加者のうち、7万9724人(78.7%)が女性で、男性は2万1533人(21.3%)だった。1日当たりの加糖飲料消費量は、女性より男性の方が有意に多く、中央値で74.6mLと90.3mLだった。加糖飲料全体に占める割合は、100%フルーツジュースが45%、その他の加糖飲料が36%、人工甘味料入り飲料が19%だった。
最低四分位群の1日当たりの消費量の平均は27.6mLで、第2四分位群は57.0mL、第3四分位群は101.4mL、最高四分位群は185.8mLで、全体の平均は92.9mLだった。このうち、100%フルーツジュースの消費量は、16.2mL、33.7mL、66mL、107.5mLで、全体の平均は55.8mLだった。これらの集団の人工甘味料含有飲料の消費量は、15.3mL、25.3mL、24.5mL、32mLで、全体では24.5mLだった。
中央値5.1年、延べ49万3884人・年の追跡で、2193人が何らかの癌を発症、うち693人が乳癌、291人が前立腺癌、166人が大腸癌だった。診断時の平均年齢は58.5歳だった。
加糖飲料の消費量が多いことは、あらゆる癌のリスクが高いことと関係していた。飲料100mL/日増加当たりの部分分布ハザード比は1.18(95%信頼区間1.10-1.27)だった。乳癌と加糖飲料の関係も有意で、100mL/日増加当たりの部分分布ハザード比は1.22(1.07-1.39)になった。前立腺癌と大腸癌は、加糖飲料の消費量と関連が見られなかった。
100%ジュースの消費量は、あらゆる癌のリスク上昇に関係していた。100mL/日増加当たりの部分分布ハザード比は1.12(1.03-1.23)だった。また、ジュースを除いた加糖飲料の消費量は、あらゆる癌と乳癌のリスク上昇に関連しており、100mL/日増加当たりの部分分布ハザード比はあらゆる癌が1.19(1.08-1.32)、乳癌が1.23(1.03-1.48)だった。人工甘味料含有飲料の消費量は、癌のリスク上昇と関連が見られなかった(1.02、0.94-1.10)。
これらの結果から著者らは、加糖飲料の消費量が多いことは全ての癌や乳癌の発症リスク上昇に関連しており、100%フルーツジュースも全ての癌のリスク上昇に関連していたため、癌を予防するための修正可能な危険因子になり得ると結論している。