ブログ blog

DASH食は血圧だけでなく痛風リスクも下げる

こんにちは、DASH食(「高血圧予防のための食事法」の略語)に関する文献を紹介します。DASH食は心筋梗塞などの心疾患で亡くなる人が多い米国で考案され、カリウムやカルシウム、マグネシウムなどのミネラルや食物繊維が豊富な野菜や果物、低脂肪の乳製品などを積極的にとることで、塩分を排出し血圧を抑えるのが特徴です。痛風対策としてはこれまでプリン体の摂取を減らす食事療法が行われてきましたが、今回の論文からは高血圧対策のDASH食が痛風予防にも効果がありそうです。前回の地中海食や今回のDASH食を積極的に取り入れたいですね。

論文の内容は以下を参考にしてください。
The Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) diet, Western diet, and risk of gout in men: prospective cohort study
SK Rai et al.  BMJ 2017;357:j1794

米Harvard大学医学部のSharan K Rai氏らは、The Health Professionals Follow-up Study(HPFS)のデータを利用して食生活の影響を分析し、DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食を実行している人では痛風のリスクが低く、反対に典型的な西洋食を食べている人は痛風のリスクが高くなっていたため、痛風リスクが高い人にはDASH食が勧められると報告した。

 痛風患者には、プリン体の摂取を抑える食事が推奨されているが、その効果は限られており、持続も難しい。低蛋白質の食事では、引き替えに精製穀物や不健康な脂質の摂取が増えて、心血管代謝疾患の悪化を招く可能性がある。そのため、痛風と心血管代謝疾患の両方のリスクを減らす食事法が求められている。DASH食は、血圧を下げる食事として心血管疾患予防に役立つとされているが、血清尿酸値も下がることが報告されている。一方、典型的な西洋食は、血清尿酸値を高めることが知られている食品を多く含んでいるが、西洋食の摂取と痛風リスの関連を直接調べたデータは知られていない。

 そこで著者らは、DASH食、西洋食と痛風の関係を分析するために、前向きの大規模コホート研究を計画した。1986年に始まったHPFS研究に参加した、当時40歳から75歳だった男性で、ベースラインで痛風歴がなく、食習慣に関する調査を完了していた4万4444人を対象とした。

 それらの一人一人について、食物摂取頻度調査の結果を用いて、DASH食パターンスコア(果物、野菜、ナッツと豆類、低脂肪乳製品、全粒穀物を多く摂取し、ナトリウム、加糖飲料、赤身肉と加工肉の摂取は少ないことに基づく)と、西洋食パターンスコア(赤身肉と加工肉、フライドポテト、精製穀物、菓子やデザートの摂取が多いことに基づく)を計算した。

 DASH食スコアは、8ジャンルの食品のそれぞれについて、摂取量に基づいて男性を5分位群に層別化し、摂取量が多い方が良い食品では最高五分位群に5ポイント、最低五分位群に1ポイントを与え、摂取量が少ない方が良い食物については逆に、最高五分位群に1ポイント、最低五分位群に5ポイントを与えて、スコア合計を算出する。スコア幅は8から40になる。今回の分析では、スコアの合計に基づいて、対象者を5分位群に層別化した。西洋食パターンスコアも同様に求めて、対象者を5分位群に層別化した。

 主要評価項目は、米リウマチ学会の痛風調査基準を満たす痛風の罹患とし、11の判定項目(急性関節炎の発作を経験、1日以内に最大の炎症が発症、関節領域の発赤、第1中足指節関節の疼痛と腫脹、高尿酸血症など)のうち6項目以上に当てはまる場合を痛風と判定した。

 26年を超える追跡で、1731人の痛風の診断基準に該当した。うち1500人(86.7%)は足部痛風で、1226人(70.8%)に高尿酸血症があり、605人(35.0%)は足根関節に及び、167人(9.6%)に痛風結節があった。

 DASH食パターンスコアが高いことは痛風リスクが低いことに関係していた。年齢、総摂取熱量、BMI、高血圧、利尿薬の使用、アルコール摂取などの因子で補正した、最低五分位群と比較した最高五分位群の相対リスクは0.68(95%信頼区間0.57-0.80)になった。反対に、西洋食パターンスコアが高いことは痛風リスクが高いことに関係していた。補正相対リスクは1.42(1.16-1.74)だった。

 著者らはこの研究を、DASH食が痛風リスク低下に関係すること、西洋食が痛風リスク上昇に関係することを、初めてプロスペクティブに検証したものと位置づけている。