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家族の2型糖尿病診断年齢が若いほど子の糖尿病発症年齢も若い

こんにちは、2型糖尿病は遺伝的素因と生活習慣の悪化により発症するため家族内に糖尿病がある場合には本人が将来的に糖尿病になる可能性があることは知られています。今回の文献では、さらに親が若くして2型糖尿病を発症した場合には子も糖尿病を発症する年齢が若くなる傾向にあるため、若い時から定期的に検査を行ったりリスク因子の管理を行っていく必要がありそうです。

詳細な内容は以下を参考にして下さい。
Effect of familial diabetes status and age at diagnosis on type 2 diabetes risk: a nation-wide register-based study from Denmark. 
Silverman-Retana O, et al.   Diabetologia. 2020:63:934-43.

家族の2型糖尿病診断時の年齢が、個人の糖尿病発症リスクと発症年齢に及ぼす影響についてデンマークの全国的なレジストリ研究で検討された。解析の結果、若年齢で糖尿病と診断された家族がいる個人は、高齢になってから診断された家族がいる個人よりも糖尿病を発症するリスクが高く、また若年齢で発症する可能性が高かった。

 糖尿病の家族歴は、簡便なリスクマーカーであり、糖尿病のスクリーニングやリスク予測ツールなどで広く用いられている。2型糖尿病の強力な決定因子には、肥満、運動不足、食生活、社会経済的地位の低さなどの行動的/社会的因子があり、これらの因子は家族でクラスターを形成し、何世代にもわたって引き継がれていく。これまでの報告では、親の糖尿病は子供の糖尿病リスクを2~4倍上昇させ、また家族性の2型糖尿病のリスクは、糖尿病の家族との血縁関係とその人数に影響を受けることが示されている。しかし、家族の糖尿病診断時の年齢が、個人の糖尿病発症リスクや発症年齢に及ぼす影響に関しては不明である。本研究では、糖尿病の家族との血縁関係とその人数に加えて、家族の糖尿病診断時の年齢と発症リスクには関連があるという仮説を立て、デンマークの全国的な複数のレジストリを用いて、オープンコホート研究を行った。

 本研究の対象は、1995~2012年にデンマーク在住の30歳以上で(1型糖尿病例を除外するため)、コホートへの登録開始時点(1995年1月1日)で糖尿病と診断されておらず、両親に関する情報が確認できる全ての個人200万552人(110万7915組の家族)とした。期間中に30歳となった個人も、両親に関する情報が利用可能な場合はコホートに追加した。追跡期間の中央値は14年だった。

 アウトカムは2型糖尿病の発症。2型糖尿病の罹患率比(IRR)を推定するために、登録時の年齢と最高学歴(就学年数)で補正した多変量ポアソン回帰モデルを用いた。

 追跡中に2型糖尿病を発症したのは7万6633人だった。両親ともに糖尿病の場合、糖尿病の家族がいる場合と比較して、2型糖尿病のIRRの大幅な上昇が認められた(女性のIRR:4.00、95%信頼区間[95%CI]:3.73-4.28、男性のIRR:3.87、95%CI:3.65-4.11)。また、母親と全同胞(full sibling:両親が同じ兄弟姉妹)が糖尿病の場合、IRRはさらに上昇していた(女性のIRR:4.62、95%CI:4.24-5.04、男性のIRR:4.40、95%CI:4.09-4.74)。父親と全同胞が糖尿病の場合も同様の結果が示された。

 2型糖尿病のIRRは、家族の糖尿病診断時の年齢が高くなるにつれて低下していた。母親が糖尿病ではない同じ年齢、性別の個人と比較して、母親が50歳で糖尿病と診断された場合のIRRは、男性では4.47(95%CI:4.11-4.87)、女性では3.86(95%CI:3.57-4.17)だった。一方、母親が80歳で糖尿病と診断された場合のIRRは、男性では1.45(95%CI:1.36-1.55)、女性では1.51(95%CI:1.41-1.62)まで低下した。

 父親については、父親が50歳で糖尿病と診断された場合のIRRは男性では3.98(95%CI:3.56-4.44)、女性では3.32(95%CI:2.97-3.70)だった。一方、父親が80歳で糖尿病と診断された場合のIRRは男性では1.42(95%CI:1.33-1.51)、女性では1.41(95%CI:1.30-1.54)まで低下した。

 同胞については、全同胞が30歳で糖尿病と診断された場合のIRRは男性では3.62(95%CI:3.34-3.92)、女性では3.10(95%CI:2.83-3.39)だった。一方、全同胞が60歳で糖尿病と診断された場合のIRRは男性では1.96(95%CI:1.80-2.14)、女性では2.07(95%CI:1.86-2.29)まで低下した。

 2型糖尿病の累積罹患率について検討してみると、親の診断時年齢が若かった個人では若年齢で罹患率が上昇していた。母親が2型糖尿病ではない男女では、累積罹患率が1%を超えたのは45~65歳だった。一方、母親が糖尿病の男性では、母親の診断時年齢が50歳の場合には56歳で累積罹患率が2%に達したが、母親の診断時年齢が70歳の場合には累積罹患率が2%に達したのは64歳だった。母親が糖尿病と診断された女性でも、また父親が糖尿病の男女でも同様の結果が示された。

 著者らは、2型糖尿病の診断時年齢は容易に入手可能で、若年発症のリスクが高い個人の同定に非常に重要な情報であるため、糖尿病家族歴の記録に必須な項目にすべきとした。また、若年発症のリスクが高い個人は、より精密なリスク因子の評価と継続管理、家族も対象とした予防戦略からベネフィットを得られる可能性がある、と考察しています。