「甲状腺」という言葉を聞いたことがあっても、どこにあるのか、どんな働きをしているのか、詳しく知っている方は多くありません。しかし、甲状腺は私たちの体調や気分に深く関わる大切な臓器です。この記事では、甲状腺の基本的な位置や働き、甲状腺の病気についてわかりやすく解説します。
目次
■甲状腺ってどこにあるの?
甲状腺は首の前、のどぼとけのすぐ下にあります。甲状腺は、喉仏の下にある重さ20〜30グラムほどの小さな臓器です。ちょうど気管の上に覆いかぶさるような位置にあり、蝶が羽を広げたような形をしています。右葉・左葉という2つの部分に分かれており、中央の峡部でつながっています。
正常な甲状腺は柔らかく、触ってもはっきりとはわからない程度です。そのため、異常が起こらない限り、日常生活の中で意識する機会はほとんどありません。
■甲状腺ホルモンのはたらきは「体のエンジン調整役」
甲状腺の主な役割は「甲状腺ホルモン」を作り、血液中に分泌することです。甲状腺ホルモンは、全身の新陳代謝を促進する作用を持っています。体が動くためのエネルギー産生を調整しており、例えるなら自動車のアクセルのようなものです。
分泌が多すぎれば「エンジンの空ぶかし」状態となり、じっとしていても脈が速くなったり、体温が上がったりします。
逆に分泌が少なすぎると、代謝が落ち込み、体がだるくなったり、寒がりになったりといった症状が現れます。甲状腺ホルモンは、心臓・脳・筋肉・皮膚など、ほぼすべての細胞に影響を与えるホルモンで、生きていくうえで不可欠な存在です。
■甲状腺の病気は
甲状腺の病気は、大きく分けて「甲状腺機能異常」と「甲状腺腫瘍」の2つに分類されます。
◎甲状腺機能異常
甲状腺ホルモンの分泌量が多すぎたり、逆に少なすぎたりする状態を指します。ホルモンが過剰になる代表的な病気が「バセドウ病」、ホルモンが不足する代表的な病気が「橋本病」です。いずれも自己免疫の異常によって起こる病気とされています。
◎甲状腺腫瘍
甲状腺にしこり(腫瘍)ができる病気です。良性のものもありますが、なかには「乳頭がん」などの悪性腫瘍も含まれます。しこりが大きくなったり、触って気づく場合もありますが、無症状のまま見逃されることも少なくありません。
■甲状腺の病気は女性に多い?
自己免疫性疾患であるバセドウ病や橋本病は、女性に多いという特徴があります。
これは、女性ホルモンの影響や妊娠・出産・更年期などホルモンバランスの変動が免疫系に影響を及ぼしやすいことが要因です。そのため、月経不順や不妊、流産の原因となることもあります。何となく体調がすぐれない、疲れやすい、気分が落ち込みやすいといった不調が続く場合、甲状腺の病気が隠れていることもあるため注意しましょう。
■甲状腺の検査は簡単にできます
甲状腺の病気を調べる場合、血液検査と超音波検査が中心です。
◎血液検査
甲状腺ホルモン(FT3、FT4)や、脳から分泌されるTSH(甲状腺刺激ホルモン)の値を測定し、ホルモンバランスの状態を確認します。また、バセドウ病や橋本病では、特定の自己抗体(TRAb、TPOAbなど)の測定も行います。
◎超音波検査
甲状腺の大きさやしこりの有無を画像で確認でき、被ばくの心配もない安全な検査です。バセドウ病や橋本病の診断にも有用な検査です。
■見逃されやすいからこそ、早めの確認を
甲状腺の病気は、全身のさまざまな不調として現れるため、「加齢のせい」「疲れがたまっているだけ」と見過ごされがちです。しかし、ホルモンの過不足が原因であれば、適切な治療で大きく改善できます。首にしこりがある、最近体調がおかしい気がする、そんな時は一度甲状腺の検査を受けてみてください。