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バセドウ病や橋本病は遺伝する? 甲状腺疾患と遺伝の関係を解説


甲状腺の病気といえば、バセドウ病や橋本病がよく知られています。これらは自己免疫の異常が原因で起こる病気ですが、「親やきょうだいに同じ病気の人がいると、自分もなるの?」と心配される方も少なくありません。


今回は、甲状腺疾患の中でも代表的な橋本病とバセドウ病に焦点をあて、遺伝との関係や発症のしくみをわかりやすく解説します。ご家族に甲状腺疾患がある方や、体調の変化が気になる方はぜひ参考にしてください。


■甲状腺の病気はなぜ起こる?まずは“自己免疫”を知ろう


甲状腺の病気には、体の免疫システムが深く関わっています。バセドウ病や橋本病は、体を守るはずの免疫が自分自身の甲状腺を攻撃してしまう「自己免疫疾患」です。まずは、甲状腺の働きと自己免疫の仕組みを知ることから始めましょう。


◎体のエネルギーを支える甲状腺ホルモンとは

甲状腺は首の前側にある小さな臓器ですが、体のエネルギー代謝を調整する重要な役割を担っています。甲状腺から分泌される「甲状腺ホルモン」は、体温の維持や心臓の働き、脂肪や糖の代謝を支えるホルモンです。ホルモンの分泌が少なくても多すぎても体のバランスが崩れ、さまざまな症状が現れます。


◎免疫が自分の体を攻撃する「自己免疫反応」って?

通常、免疫はウイルスや細菌などの“外敵”を攻撃します。しかし、何らかの原因で自分の体の一部を異物と勘違いして攻撃してしまうことがあります。これが「自己免疫反応」です。甲状腺がこの反応の標的になると、ホルモンの量が乱れて橋本病やバセドウ病が発症します。


■橋本病は遺伝するの?家族に多い理由と発症のしくみ


橋本病は「家族にも多い」と言われることが多く、遺伝との関係が注目されています。ただし、親から子へ直接遺伝する病気ではなく、“なりやすい体質”が受け継がれると考えられています。


◎橋本病の原因は免疫の“勘違い”

免疫の異常によって甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気です。免疫が甲状腺を「敵」と認識して抗体を作り出し、その結果ホルモンを作る機能が少しずつ低下します。倦怠感や体重増加、むくみ、寒がりなどの症状がゆっくり進行するのが特徴です。


◎遺伝の影響はあるけれど、必ず発症するわけではない

橋本病には遺伝的な要素があるとされ、家族に同じ病気の人がいる場合は発症のリスクが高くなる傾向があります。しかし、遺伝だけで病気が起こるわけではありません。


ストレス、感染、ヨウ素の摂取量などの環境要因が重なって発症すると考えられています。つまり「遺伝はあくまで体質のひとつ」であり、必ず病気になるわけではありません。


◎家族に橋本病がいる人が気をつけたいこと

家族に橋本病の方がいる場合、自分も発症しやすい体質を持っている可能性があります。疲れやすい、体が冷える、体重が増えやすいといった症状があれば、早めに甲状腺の検査を受けることが大切です。血液検査で自己抗体やホルモンの値を調べることで、早期発見・早期治療が可能になります。


■バセドウ病は遺伝する?体質と環境が関係する病気


バセドウ病も自己免疫疾患の一つであり、遺伝的な要素と環境的な要因が複雑に関わっています。家族に同じ病気の人がいる場合、発症のリスクは高まりますが、生活習慣や環境を整えることでリスクを減らせます。


◎遺伝のほかに影響する“ストレス・喫煙・ヨウ素”などの要因

喫煙や慢性的なストレス、過剰なヨウ素の摂取、ウイルス感染などが引き金になることがあると考えられています。バセドウ病の家族歴がある人がヘビースモーカーであった場合、発症リスクが増加するという研究報告もあります。


このように、体質と環境要因の両方が重なって発症する「多因子疾患」として理解することが重要です。


◎家族に同じ病気がある人が意識すべきサインとは

バセドウ病は、動悸、手の震え、体重減少、イライラ、眼の異常(眼球突出など)が特徴です。こうした症状に心当たりがあり、さらに家族にバセドウ病の既往がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。


■甲状腺の病気と遺伝の関係を正しく理解しよう


甲状腺の病気は「遺伝する病気」と誤解されがちですが、実際には「体質が似やすい病気」です。遺伝的要因だけでなく、生活習慣やストレスなどの環境的要素が重なったときに発症します。正しい知識を持ち、早期に検査を受けることが大切です。


◎「遺伝=発症」ではない、その理由

たとえ家族に甲状腺疾患があっても、全員が発症するわけではありません。研究では、一卵性双生児でも片方が発症してもう片方が発症しないケースが多いことがわかっています。つまり、遺伝は「発症のきっかけの一部」に過ぎないのです。


◎生活習慣や環境を整えることでリスクは減らせる

規則正しい生活やバランスの取れた食事、禁煙、ストレス管理は、甲状腺疾患のリスクを減らす基本です。ヨウ素を多く含む海藻類の過剰摂取にも注意しましょう。体にやさしい生活を心がけることで、遺伝的リスクがあっても発症の軽減につながります。


◎不安なときは、検査で“今の状態”を知ることから

家族に甲状腺疾患がある場合は、血液検査や超音波検査で自分の甲状腺の状態を知ることをおすすめします。妊娠を希望する方は、妊娠前に一度検査を受けると安心です。早期に異常を見つけて治療を始めれば、日常生活に大きな支障を出すことなく過ごせるケースも多いです。


■家族に甲状腺疾患がある方こそ、定期的な検査を


甲状腺の病気は遺伝的な体質が関係するものの、必ず発症するわけではありません。ストレスや生活習慣など、日常の工夫がリスクを減らすことにつながります。


甲状腺の病気は初期症状があいまいで気づきにくいことも多いため、「気になる症状がある」「家族に同じ病気がいる」そんな時には、どうか迷わず一度ご相談ください。あなた自身の体を守る第一歩になります。


清水ヶ岡糖尿病内科・皮フ科クリニック
医師
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