
周期のずれと冷えが重なったとき、まず確かめたいこと
月末の残業が続いたあと、月経が予定より遅れる。以前より寒さがこたえ、朝から体が重い。妊娠を望んで8カ月が過ぎると、こうした変化を「忙しさのせい」で片づけてよいのか迷うものです。この記事では、ホルモンと排卵の関係、甲状腺など確かめておきたい状態、相談時に役立つ記録を順に整理しました。夫婦で次の一歩を考える材料として読んでみてください。
この記事の要点まとめ
- 排卵の遅れやホルモンの変化で月経周期が長くなることがあり、周期や基礎体温だけで原因を判断するのは難しいです。
- 疲れや寒がり、月経の乱れが続く場合は、甲状腺機能や多嚢胞性卵巣症候群なども検査で確認することがあります。
- 35歳で妊活8カ月なら受診を検討し、月経日や体調、服薬を記録して、夫婦双方の検査について相談しましょう。
月経周期が長くなったとき、ホルモンは排卵にどう関わる?

エストロゲンとプロゲステロンは、排卵の前後で働きが異なる
月経が始まると、脳の下垂体から出る卵胞刺激ホルモン(FSH)が卵巣の卵胞を育て始めます。卵胞が大きくなるにつれて卵胞ホルモン(エストロゲン)が増え、子宮内膜が厚くなっていきます。エストロゲンが十分に高まったところで黄体形成ホルモン(LH)が一気に分泌され、これが排卵の合図です1。
排卵後の卵胞は黄体に変わり、黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌します。内膜を着床に向けた状態に整え、基礎体温を押し上げるのもこのホルモンの役割です2。卵胞の発育に時間がかかると排卵が遅れ、周期全体が長くなることがあります。
黄体機能不全を月経や基礎体温だけで決めつけない
黄体の働きが十分でない状態は黄体機能不全と呼ばれ、高温期が短い、体温の上がり方がなだらか、といった形で気づかれることがあります。とはいえプロゲステロンの分泌には波があり、測る日によって値は変わります2。
原因不明不妊の女性と比較対象の女性で黄体中期の値を比べた研究のまとめでは、はっきりした差は見られなかったと報告されています3。周期の変化や一度の数値だけで不妊の原因を特定するのは難しいため、診察と時期を合わせた検査を組み合わせて判断します。
ホルモンバランスが変わる原因は、忙しさだけではない
睡眠不足・体重変化・運動量の変化と、排卵への影響
排卵の指令を出す脳の視床下部は、強いストレスや睡眠不足、短期間での体重の増減、急に増やした運動の影響を受けやすい部分です1。加えて35歳前後からは、卵巣の働きにも年齢に伴う変化が重なります2。生活リズムを整えることには意味がありますが、それを理由に原因の確認を後回しにする必要はありません。
疲れや寒がりが続くなら、甲状腺機能も確認したい
甲状腺ホルモンは全身の代謝を担っています。橋本病などで甲状腺機能低下症になると、疲れやすさや寒がり、むくみと並んで、月経の乱れや排卵の不調が見られることがあります1。自覚が乏しいまま経過する場合もあるので、気になる症状が重なるなら血液検査で一度確かめておくと、妊活の計画も立てやすくなります。
すでにチラージン(レボチロキシン)やメルカゾール(チアマゾール)を服用している方は、妊娠を希望していることを主治医に早めに伝え、自己判断で中止や変更をしないことを心がけてください。メルカゾールは妊娠初期の使用で胎児への影響が報告されており、妊娠前から薬の選び方を相談する場合があります。レボチロキシンは妊娠中も続けることが多く、量の見直しが検討されます12。
月経が不規則なら、多嚢胞性卵巣症候群も候補に
卵巣の中に小さな卵胞がたくさん並んだまま排卵しにくくなる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)も、周期が延びる原因の一つです。LHや男性ホルモンの値、超音波で見た卵巣の様子などを合わせて診断します2。高プロラクチン血症なども候補に挙がるため、症状から見当をつけるより、検査で確かめるほうが確実です。
35歳で妊活8カ月、どんな記録と検査を持って相談する?
避妊をせずに1年たっても妊娠しない状態を一般に不妊と呼びますが、35歳以上では半年ほどを目安に相談を考える考え方も示されています2。月経周期の変化も重なっている今、受診を先延ばしにする理由はあまりありません。
FSHや甲状腺の検査は、いつ何を確認する?
FSHは卵胞を育てるホルモンで、LHやエストラジオール(E2)とともに、月経開始から3〜5日目ごろに測るのが一般的です。プロゲステロン(P4)は排卵から1週間前後の黄体期に合わせて調べます。甲状腺のTSHや遊離T4、プロラクチンなどは、周期の時期を問わず確認されることが多い項目です12。
基準範囲から少し外れた値が一つあっても、それだけで妊娠の見通しが決まるわけではありません。結果は周期や症状と並べて、医師と一緒に読み解いていくものです。
月経日・体調・服薬を記録し、受診時に伝える
相談の場で役立つのは、次のような記録です。
- 直近数カ月の月経開始日と、周期の日数
- 基礎体温を測っていれば、そのグラフ
- 疲れやすさ、寒がり、むくみが出始めた時期
- ここ半年ほどの体重の変化
- 服用中の薬やサプリメント、妊活を始めた時期
スマートフォンのメモやアプリで十分です。記録がそろっていなくても、覚えている範囲を伝えれば相談は始められます。
名古屋市で相談先を考えるときは、夫婦双方の可能性も視野に
内分泌内科で相談できる体調の変化と、婦人科につなぐ相談
疲れや寒がり、甲状腺への不安といった全身の体調の変化は、内分泌内科で相談しやすい内容です。名古屋市内で働きながら通う方なら、通勤の途中で立ち寄れるか、月経周期に合わせて検査日を組めるかも、相談先を選ぶ目安になります。排卵の評価や不妊全体の検査が必要になれば、婦人科や生殖医療を担う医療機関への相談もあわせて検討します。
当院では、すべての患者さんに診療報酬の算定項目を記載した明細書を発行しています。受けた検査の内容を後から確認できるので、別の医療機関で相談するときの手がかりにもなります。
女性側の検査だけで終えず、夫にも相談を切り出す
不妊の原因は女性側に限らず、男性側の要因や、夫婦双方に要因がある場合もあります2。精液検査は体への負担が比較的少なく、早い段階で行われることの多い検査です。男性不妊に対するクロミフェンの研究も報告されていますが4、確立した治療とまでは言えない段階です。「私も検査を受けるから、一緒に確かめてほしい」と伝えるのも、一つの切り出し方です。
生活を見直しつつ、補助食品だけに頼らない
睡眠時間の確保や食事のかたよりの見直しは、検査と並行して進められます。卵巣予備能が低下した方を対象に、ビタミンやコエンザイムQ10などの補助食品を検討した研究のまとめもありますが5、対象や研究の質には限りがあり、誰にでも当てはまる結論ではありません。数カ月分の月経日の記録を手元にそろえ、受診の予約を1件入れる。そこから具体的な検査の相談が始まります。
よくある質問
Q1. ホルモンバランスの乱れの原因は何ですか?
A. 強いストレス、睡眠不足、急な体重の増減、過度な運動、年齢に伴う卵巣の変化などが挙げられます。甲状腺機能低下症や多嚢胞性卵巣症候群、高プロラクチン血症など、病気が背景にある場合もあるため、月経の乱れが続くときは検査での確認を検討してください。
Q2. エストロゲンとプロゲステロンの違いは何ですか?
A. エストロゲン(卵胞ホルモン)は主に排卵前に増え、卵胞の発育や子宮内膜を厚くする働きに関わります。プロゲステロン(黄体ホルモン)は排卵後の黄体から分泌され、内膜を着床に向けた状態に整え、基礎体温を上げる役割を持ちます。
Q3. チラージンやメルカゾールを飲んでいても妊娠を希望できますか?
A. 甲状腺の薬を服用中でも、妊娠を計画すること自体は可能です。ただし、メルカゾール(チアマゾール)は妊娠初期の使用で胎児への影響が報告されているため、妊娠を希望した段階で主治医と薬の調整を相談します。チラージン(レボチロキシン)は妊娠中も継続されることが多く、量の見直しが必要になる場合があります。どちらも自己判断で中止・変更しないでください。
Q4. 甲状腺機能低下症をそのままにしておくと、妊活に関係しますか?
A. 甲状腺機能低下症では、月経の乱れや排卵の不調が見られることがあります。症状が軽く自覚しにくいこともあるため、妊娠を希望している方は、疲れや寒がりなどが続く段階で血液検査を受けておくと、その後の計画が立てやすくなります。
Q5. ホルモン検査の費用はどのくらいですか?
A. 症状に基づいて保険診療で行う血液検査の場合、検査項目の数にもよりますが、診療報酬点数表に基づく3割負担の一般的な目安は1,000〜5,000円程度です。これは一般的な相場であり当院の費用ではありません。実際の費用は医療機関や検査内容により異なり、当院の費用は診察のうえでご案内します。なお、不妊治療に関わる検査や治療の一部には、公的医療保険が適用されない自由診療となるものもあります。
参考文献
1. 日本内分泌学会. 内分泌疾患・ホルモン異常に関する学術情報. https://www.j-endo.jp/
2. 日本産科婦人科学会. 妊娠分娩・婦人科腫瘍・不妊生殖に関する学術情報. https://www.jsog.or.jp/
3. Raperport C, Chronopoulou E, Homburg R, et al. Endogenous progesterone in unexplained infertility: a systematic review and meta-analysis. J Assist Reprod Genet. 2023. PMID: 36572790, DOI: 10.1007/s10815-022-02689-5
4. Huijben M, Huijsmans RLN, Lock MTWT, et al. Clomiphene citrate for male infertility: A systematic review and meta-analysis. Andrology. 2023. PMID: 36680549, DOI: 10.1111/andr.13388
5. Li X, Zhao Q, Lin G, et al. The auxiliary effect of oral nutritional supplements on fertility in women with diminished ovarian reserve: a systematic review and meta-analysis. Ann Med. 2025. PMID: 41185971, DOI: 10.1080/07853890.2025.2583330
1999年 春日井市民病院研修医
2001年 春日井市民病院内科
2005年 名古屋大学大学院医学系研究科
2009年 米国シンシナティ大学留学
2011年 ひまわりクリニック
大雄会ルーセントクリニック
2012年 千秋病院、済衆館病院
2013年 あおい在宅診療所
2016年 公立西知多総合病院 内分泌・代謝内科部長
2018年 独立行政法人地域医療機能推進機構
中京病院内分泌・糖尿病内科診療部長兼
糖尿病センター長
2020年 清水ヶ岡クリニック開院
医学博士
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
日本糖尿病学会専門医
日本医師会認定産業医
【所属学会】
日本内科学会
日本糖尿病学会
日本内分泌学会

