
「体調は問題ないのに」——健診で血糖値が高めと指摘された方へ
職場健診でHbA1cや空腹時血糖値が高めと言われても、体に不調がなければ後回しにしたくなりますよね。ただ境界型(糖尿病予備軍)は、自覚症状が乏しいまま時間が過ぎやすいと言われています。この記事では、症状が出にくいとされる理由、受診を考えたい数値の目安、医療機関で行われる検査の流れを整理しました。
この記事の要点まとめ
- 糖尿病予備軍(境界型)は自覚症状が乏しく、数値でしか状態を把握しにくいとされます
- HbA1c6.0〜6.4%や空腹時血糖110〜125mg/dLは受診検討の目安とされています
- 早期の生活習慣見直しや二次健診が、将来の状態管理の選択肢につながると考えられます
自覚症状がない糖尿病予備軍(境界型)の特徴と放置のリスク
なぜ高血糖でも体調の変化を感じにくいのか
血糖値が基準より高めでも、境界型の段階では痛みや発熱といったわかりやすいサインが出にくいとされています。血糖の上昇はゆるやかに進むことが多く、体がその状態に慣れていくため、本人が違和感を持ちにくいと考えられています。のどの渇きや多尿といった変化は、血糖値がかなり高い水準になってから現れやすいと報告されています1。
つまり、「症状がない=血糖の状態に問題がない」とは言い切れない。ここがこの段階の難しさです。数値という客観的な指標でしか把握しにくいからこそ、健診結果の意味を確認しておく価値があります。
放置によって水面下で進む血管へのダメージと動脈硬化
注目したいのが、食後に血糖値が大きく上がる、いわゆる血糖値スパイクです。空腹時の数値が基準内でも、食後だけ高くなっているケースは珍しくありません。この変動は血管の内側に負担をかけ、動脈硬化の進行に関わる要因のひとつと考えられています2。
境界型の段階から血管に影響が及び得るとされるため、「糖尿病と診断される前だから何もしなくてよい」とは考えにくいところ。健診は、この水面下の変化に気づくきっかけになります。
糖尿病への進行と将来的な仕事・生活への影響
糖尿病に進行した場合、網膜症・腎症・神経障害といった細小血管の合併症や、心血管系の病態への関与が問題となると指摘されています2。腎機能の低下が進めば透析が必要になる場合もあり、通院頻度や医療費、働き方に影響が及ぶ可能性も考えられます。
住宅ローンや教育費が重なる年代であれば、この先の見通しを立てておくこと自体が家族を守る備えになるはずです。境界型は、まだ選択肢が多く残されている段階。そう捉えていただきたいと考えています。
受診を検討すべきHbA1cと空腹時血糖値の判断基準

要受診・再検査の目安となるHbA1cと空腹時血糖値の数値ライン
健診結果を見るときは、次の2つの数値に目を向けてください23。
- HbA1c:5.6〜5.9%で保健指導の対象、6.0〜6.4%は糖尿病が否定できない段階として詳しい検査がすすめられます。6.5%以上は糖尿病型の判定基準に該当します。
- 空腹時血糖値:100〜109mg/dLは正常高値、110〜125mg/dLは境界型、126mg/dL以上は糖尿病型の判定に用いられます。
HbA1cは過去1〜2か月の平均的な血糖状態を反映する指標とされ、当日の食事に左右されにくいところが特徴です。
正常値・予備軍・糖尿病の診断区分の違い
健診の判定は「異常なし」「要経過観察」「要精密検査」などに分かれますが、これはあくまでふるい分け(スクリーニング)の結果にとどまります。糖尿病の診断は、血糖値とHbA1cの組み合わせ、さらに別日の再検査も踏まえて医師が総合的に判断します2。
境界型は、正常と糖尿病型の中間にあたる状態を指します。診断名がつかないぶん見送られやすいのですが、この時期の対応が将来の状態に関わり得る局面ともいえます。
予備軍から進行した際に見逃してはならない初期症状
次のような変化が続く場合は、早めに医療機関へご相談ください1。
- のどが渇きやすく、水分をとる量が増えた
- 尿の回数や量が増えた、夜間にトイレで起きる
- 食べているのに体重が減ってきた
- 強い倦怠感が抜けない
- 手足のしびれ、視界のかすみ
いずれも血糖の状態が進んだ際に現れやすいサインとされます。当てはまる項目があれば、次回の健診を待たずに受診をご検討ください。
受診に対する誤解と医療機関で行われる二次健診の流れ
誤解:「予備軍で受診するとすぐに服薬治療が始まる」わけではない
受診をためらう理由として多いのが、「薬を飲み始めることになるのでは」「厳しい制限を言い渡されるのでは」という気がかりです。実際のところ、境界型の段階でまず行うのは現在の状態の把握と、生活習慣の振り返り。受診したからといって、ただちに薬物療法が始まるとは限りません2。
当院では、患者さんの生活背景や勤務状況をうかがったうえで、続けられる範囲から一緒に方針を考えることを大切にしています。仕事の都合で難しい部分があれば、遠慮なくお伝えください。
精査(二次健診)で実施される主な検査内容
健診で指摘を受けた後の二次健診では、糖代謝の状態をより詳しく評価します。主な項目は次のとおりです3。
- 空腹時血糖値・HbA1cの再測定
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT):ブドウ糖を飲み、時間ごとの血糖値の推移を確認する検査
- インスリン分泌能やインスリン抵抗性の評価
- 血圧、脂質、腎機能、尿検査など全身の状態確認
食後の血糖の動きは空腹時の採血だけでは把握しにくいため、負荷試験が判断材料として役立つ場面があります。
早期アプローチによって正常な値へ回復(リバース)を目指すポイント
境界型の段階では、体重や生活習慣の見直しにともなって血糖の指標が変化する可能性が報告されており、食事と運動を組み合わせた取り組みの意義が示されています12。ただし変化の度合いには個人差が大きく、どなたにも同じ経過が生じるものではありません。
進め方の目安としては、3〜6か月ごとに数値を確認しながら方向性を調整する流れが現実的でしょう。数字が見えると、続ける手応えもつかみやすくなります。
仕事と両立しながら取り組む生活習慣の改善と受診の手順
外食や仕事の合間でも無理なく実践できる食事と運動の工夫
多忙な日々でも取り入れやすい工夫はあります。
- 食べる順番:野菜・海藻・汁物から先に口をつけ、主食は後半に回す
- 定食を選び、丼物や麺類の単品が続かないようにする
- 甘い飲料を無糖のお茶や水に置き換える
- 会食では、締めの一杯や夜遅い炭水化物の量を意識する
- 一駅分歩く、昼休みに10分歩くなど、こまぎれの活動を積み上げる
完璧を目指すより、続く形に整えるほうが取り組みやすくなります1。
睡眠不足や慢性ストレスが血糖値に及ぼす影響への対策
血糖に関わる要素は食事と運動だけではありません。睡眠不足や慢性的なストレスは、血糖調節に関与するホルモンのバランスに影響し得ると指摘されています1。喫煙も、血管への負担という点で見直したい習慣のひとつでしょう。
残業が続く時期こそ、就寝時刻を一定に近づける、就寝前の飲酒量を控えるといった小さな調整が支えになります。生活全体を見渡すことが、数値を落ち着かせていくための土台になると考えられます。
瑞穂区周辺で相談できる通院先(内科・内分泌内科)の探し方と受診手順
受診の際は、健診結果票をそのままご持参ください。過去数年分があると、変化の傾向を読み取りやすくなります。通院先を選ぶときは、糖代謝の診療経験、職場や自宅からの通いやすさ、検査体制などを確認しておくと続けやすいはずです3。
名古屋市瑞穂区の当院は内科・内分泌内科・皮膚科・美容皮膚科を標榜し、オンライン資格確認やマイナ保険証を活用した診療情報の取得・活用体制を整えています。健診結果の見方だけのご相談でも構いませんので、気になる数値がありましたらお気軽にお声かけください。
よくある質問
Q1. 糖尿病予備軍は自覚症状が乏しいのでしょうか。
A. 境界型の段階では、痛みや明確な体調変化が現れにくいとされています。のどの渇きや多尿などは血糖値がかなり高くなってから目立つことが多いため、健診の数値で状態を把握する方法が現実的です。
Q2. 糖尿病予備軍とされる基準はどのくらいですか。
A. 一般的にはHbA1c 5.6〜6.4%、空腹時血糖値110〜125mg/dLなどが目安として用いられます。判定は数値の組み合わせや再検査も含め、医師が総合的に行います。
Q3. 予備軍と言われたら、深刻に受け止めるべきでしょうか。
A. 過度に不安を抱く必要はありませんが、そのままにせず状態を確認しておくことをおすすめします。この段階は、生活習慣を見直すという選択肢が取りやすい時期でもあります。
Q4. 予備軍から糖尿病に進行する割合はどの程度ですか。
A. 進行の割合は年齢・体重・家族歴などによって幅があり、一律には示せません。定期的な検査で経過を追いながら、ご自身の状況を把握していく形になります。
Q5. 市販の血糖対策サプリメントや特定保健用食品は役立ちますか。
A. 補助的な位置づけとされ、医学的な評価や生活習慣の見直しに代わるものではありません。ご使用を検討される場合は、内容を診察時にお知らせください。
参考文献
1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
2. 一般社団法人 日本糖尿病学会 https://www.jds.or.jp/
3. 日本内科学会 https://www.naika.or.jp/
1999年 春日井市民病院研修医
2001年 春日井市民病院内科
2005年 名古屋大学大学院医学系研究科
2009年 米国シンシナティ大学留学
2011年 ひまわりクリニック
大雄会ルーセントクリニック
2012年 千秋病院、済衆館病院
2013年 あおい在宅診療所
2016年 公立西知多総合病院 内分泌・代謝内科部長
2018年 独立行政法人地域医療機能推進機構
中京病院内分泌・糖尿病内科診療部長兼
糖尿病センター長
2020年 清水ヶ岡クリニック開院
医学博士
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
日本糖尿病学会専門医
日本医師会認定産業医
【所属学会】
日本内科学会
日本糖尿病学会
日本内分泌学会

