妊娠中・授乳中の甲状腺の薬の安全性は?赤ちゃんへの影響と不安解消

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妊娠中・授乳中の甲状腺の薬の安全性は?赤ちゃんへの影響と不安解消

妊娠中・授乳中の甲状腺の薬の安全性は?赤ちゃんへの影響と不安解消

妊娠・授乳中の甲状腺の薬、お母さんの不安に寄り添います


「お腹の赤ちゃんに薬の影響が出たらどうしよう」——そんな思いを抱える方は少なくありません。名古屋市瑞穂区の清水ヶ岡クリニックにも、妊娠中・授乳中の甲状腺治療について日々ご相談が寄せられます。本記事では、抗甲状腺薬やチラージンに関する一般的な情報、自己中断時に注意したい点、主治医と話す際のポイントを、やさしく整理してお届けします。


この記事の要点まとめ


  • 妊娠中の甲状腺の薬は自己判断で中断せず、主治医と相談しながら継続することが大切です。
  • バセドウ病の抗甲状腺薬は妊娠時期に応じた使い分けがあり、定期的なホルモン値の確認が推奨されます。
  • チラージンや抗甲状腺薬は通常量であれば授乳中も服用可能とされており、過度な心配は不要とされています。

目次



妊娠中の甲状腺治療と薬の安全性:自己中断が招くリスクと誤解


名古屋市瑞穂区にお住まいの妊娠中の方から、「このまま薬を続けても大丈夫でしょうか」というお声をよくいただきます。最初にお伝えしたいのは、自己判断での中断は、かえって母体と胎児の双方に負担をかける可能性があるということです1


「薬を飲まない方が赤ちゃんに安全」という誤解


「薬は赤ちゃんによくない」というイメージから服用をためらう方もいらっしゃいます。しかし、未治療のバセドウ病では母体が甲状腺中毒症となり、流早産や妊娠高血圧症候群、まれに甲状腺クリーゼといった注意を要する状態を招くことが知られています3。橋本病で甲状腺ホルモンが不足したままだと、胎児の発育に影響が及ぶ可能性も指摘されています。つまり、適切な薬で母体のホルモンを整えることが、結果として赤ちゃんを守る一助となります。インターネット上の極端な情報に振り回されず、主治医とよく相談しながら治療を続けましょう1


母体の甲状腺機能コントロールが胎児の発達に及ぼす影響


胎児の甲状腺は妊娠10〜12週頃から働き始めるとされ、それまでは母体から供給される甲状腺ホルモンに大きく依存します3。とくに妊娠初期は脳神経の発達にとって重要な時期で、母体のホルモンバランスが乱れると、胎児の神経発達に影響を与える可能性が報告されています。母体のTSHやFT4を安定させることは、赤ちゃんの健やかな成長を支える土台になります。名古屋市の周産期医療では産婦人科と内分泌内科の連携が重視されており、定期的な採血で数値を確認しながら治療を進めていきます。


バセドウ病・甲状腺機能亢進症の薬:妊娠初期のスイッチングとホルモン基準値


甲状腺機能亢進症の代表的な治療薬には、メルカゾール(チアマゾール)、プロジール・チウラジール(プロピルチオウラシル/PTU)があり、妊娠時期に応じた使い分けが推奨されています3


妊娠初期におけるメルカゾール(チアマゾール)の注意点と適時期の切り替え


メルカゾールは妊娠5〜9週頃の服用で、まれに頭皮欠損や臍腸管遺残などの先天異常との関連が指摘されています3。そのため、妊娠を希望する段階、あるいは妊娠が判明した時点で、比較的胎児への影響が少ないとされるプロジール/チウラジール(PTU)への切り替え(スイッチング)を検討します。ただしPTUにも肝障害などの注意点があり、妊娠中期以降は再度メルカゾールに戻す方針が取られることもあります。自己判断で薬を変えず、必ず主治医にご相談ください。


アイソトープ(放射性ヨウ素)治療後の妊娠に関する注意点


放射性ヨウ素による内用療法を受けた場合、学会の方針では治療後一定期間(おおむね6か月程度)の避妊が推奨されています2。胎児の甲状腺は妊娠10週以降にヨウ素を取り込むため、妊娠中のアイソトープ治療は行いません。挙児希望のある方は、治療計画の段階から内分泌内科の医師にお伝えいただくことが大切です。


妊娠中に目標とすべき甲状腺ホルモン(TSH、FT3、FT4)のコントロール基準値


妊娠中は通常よりやや低めのTSH値が目安となり、FT4は基準範囲上限付近を保つよう調整するのが一般的です3。具体的な数値は週数や個人差によって異なるため、定期的な採血で評価していきます。当院では、産婦人科と情報を共有しながら、ホルモン値の変動に合わせて薬の量を細やかに調整していきます


橋本病・甲状腺機能低下症の薬:チラージン(レボチロキシン)の安全性

橋本病・甲状腺機能低下症の薬:チラージン(レボチロキシン)の安全性

橋本病など甲状腺機能低下症で処方されるチラージン(レボチロキシン)については、過度に不安を感じる必要は少ないと考えられています3


チラージンは「体内に足りないホルモンの補給」だから赤ちゃんにも配慮された薬


チラージンは化学的に合成された異物ではなく、本来体内で作られている甲状腺ホルモン(T4)と同じ成分です3。不足している分を補う「補充療法」であり、適正量を維持していれば胎児への悪影響はほとんどないと考えられています。むしろ服用を中断するとホルモンが不足し、流産や胎児の発育遅延の可能性が高まるとされるため、妊娠が判明しても自己判断で中止せず継続することが大切です1


妊娠中にチラージンの必要量が増える理由と定期的な用量調整


妊娠すると胎盤由来のホルモンの影響で甲状腺ホルモンの必要量が増え、妊娠前より20〜50%程度の増量が必要になる方が多いとされています3。そのため、妊娠が分かった時点で速やかに採血を行い、TSHやFT4の値を見ながら用量を調整していきます。一般的には4〜6週ごとの検査が推奨されますが、状況によって頻度は変わります。名古屋市瑞穂区の当院でも、妊娠経過に合わせた細やかなフォローを心がけています。


授乳期における甲状腺の薬:母乳移行率と服用のタイミング


出産後も治療は続きます。授乳中の服薬についても、適切な知識があれば過度に心配する必要は少ないと考えられています3


抗甲状腺薬とチラージンの具体的な母乳移行率と乳児の甲状腺機能への影響


チラージンは生体内ホルモンと同成分のため、母乳への移行はごくわずかで、授乳児への影響は通常問題にならないとされています3。抗甲状腺薬についても、メルカゾールは1日10mg程度まで、プロジール/チウラジールは1日300mg程度までであれば、授乳を続けながら服用可能とする見解が国内外のガイドラインで示されています3


授乳中に薬を服用する具体的なスケジュール(服薬後何時間あけるべきか)


抗甲状腺薬は服用後3〜4時間で血中濃度がピークに達するとされるため、授乳直後に服薬し、次の授乳まで時間をあけると、乳児への移行をより少なくしやすいと考えられます。チラージンの場合は移行量がごく少量のため、厳密なタイミング調整は通常不要です。


産後の体調変化と内分泌内科・産婦人科の連携によるフォロー体制


産後は免疫の変化により甲状腺機能が揺らぎやすく、出産後甲状腺炎を生じることもあります3。当院では診療の透明性を高めるため明細書を無償で発行し、産婦人科とも情報を共有しながら継続的なフォローを行っています。気になる症状があれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。


よくある質問(FAQ)


Q1. 抗甲状腺薬は母乳に影響しますか?

A. メルカゾールやプロジール/チウラジールは通常量であれば母乳移行量はごくわずかで、授乳を続けながら服用可能とされています3。服薬タイミングを工夫することで、より影響を抑えやすくなります。


Q2. 甲状腺ホルモン(チラージン)は授乳中も飲めますか?

A. はい。チラージンは体内のホルモンと同じ成分による補充療法であり、授乳中の服用も問題ないとされています3。中断するとかえって母体の体調に影響することがあるため、継続が推奨されます。


Q3. 妊婦が甲状腺薬を服用するとどうなりますか?

A. 適切な薬と量を守って服用することで、母体のホルモンが安定し、胎児の健やかな発育を支えると考えられています13。自己中断はかえって負担となる場合があります。


Q4. チラージンは母乳に影響しますか?

A. チラージンの母乳移行はごく微量で、授乳児の甲状腺機能に影響を与える可能性は低いとされています3


Q5. 妊娠を考えていますが、いつ相談すべきですか?

A. 挙児希望が出てきた段階での受診をおすすめします。妊娠前から薬の調整やホルモン値のコントロールを行うことで、より落ち着いた状態で妊娠期を迎えやすくなります。


参考文献


1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/

2. 日本核医学会 https://www.jsnm.org.jp/

3. 日本内分泌学会 https://www.j-endo.jp/


清水 裕史

医師


清水ヶ岡クリニック

院長

清水 裕史

▶ 監修者プロフィール

経歴
1999年 名古屋大学医学部卒業
1999年 春日井市民病院研修医
2001年 春日井市民病院内科
2005年 名古屋大学大学院医学系研究科
2009年 米国シンシナティ大学留学
2011年 ひまわりクリニック
    大雄会ルーセントクリニック
2012年 千秋病院、済衆館病院
2013年 あおい在宅診療所
2016年 公立西知多総合病院 内分泌・代謝内科部長
2018年 独立行政法人地域医療機能推進機構
    中京病院内分泌・糖尿病内科診療部長兼
    糖尿病センター長
2020年 清水ヶ岡クリニック開院
資格・所属学会
【資格】
医学博士
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
日本糖尿病学会専門医
日本医師会認定産業医
【所属学会】
日本内科学会
日本糖尿病学会
日本内分泌学会