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低脂肪食と低糖質食の減量効果に差はなし

こんにちは、体重管理のために食事療法は非常に重要です。ダイエットのために炭水化物などの糖質を控える人もあれば脂っこい食事を控える人もあります。今回の文献では低脂肪食と低糖質食のどちらにも同等の減量効果があることがわかりましたが、個々人の体質や遺伝的背景によって低脂肪食か低糖質食にしたほうがよいかに関しては予想できないようです。現在のところ、体重減量に関する食事療法に関してはいろいろ試してみて、その人に合っものを選択していくしかなさそうです。

Effect of Low-Fat vs Low-Carbohydrate Diet on 12-Month Weight Loss in Overweight Adults and the Association With Genotype Pattern or Insulin Secretion The DIETFITS Randomized Clinical Trial
Gardner CD et al.   JAMA2018 Feb 20;319(7):667-679.

米国Stanford大学医学部のChristopher D. Gardner氏らは、低脂肪食と低糖質食の効果を比較し、遺伝子型やベースラインのインスリン分泌能が、これら食事法の有効性に関連するかどうかを検討するランダム化対照試験を行い、肥満者の減量効果に差はないこと、遺伝子型やインスリン分泌能は、より有効な食事法の選択の指標にはならなかったと報告した。

 食生活の改善は、減量を成功させるために非常に重要だ。しかし、他の食事法に比べ一貫して効果が高いことが示されている食事法はない。また、同じ食事療法に取り組んでも減量効果は個人によって大きな幅がある。これまでに行われた研究は、遺伝子型やインスリン分泌能が、食事法の減量効果への影響を修飾する可能性を示唆していた。そこで著者らは、健康的な低脂肪食(HLF)と健康的な低糖質食(HLC)がもたらす減量効果を比較し、減量の程度に遺伝子型やインスリン分泌能が関係するかどうかを調べるランダム化対照試験DIETFITSを計画した。

 試験参加者は2013年1月29日から2015年4月14日までの期間に、糖尿病ではなく、BMIが28~40で、年齢が18~50歳の地域住民から募集した。609人(平均年齢40歳、57%が女性、BMIの平均は33)を登録、12カ月間のHLF食(305人)またはHLC食(304人)の摂取に割り付けて、2016年5月16日まで追跡した。

 遺伝子型の指標は、脂質と糖質の代謝に関係する3つの1塩基多型(PPARG、ADRB2、FABP2)の組み合わせとした。想定される27通りの組み合わせの中で、先の研究によりジェノタイプ頻度が1%以上であることが示されていた15通りのうち、5つを推定低脂肪食反応性ジェノタイプ、9つを推定低糖質食反応性ジェノタイプ、1つはいずれにも該当せずに分類した。低脂肪食反応性の患者は、低糖質食を摂取した場合より低脂肪食を摂取した方が体重減少が大きく、低糖質食反応性の患者は、低脂肪食より低糖質食を摂取した方が体重減少が大きいという仮説を立てた。

 また、ベースラインでインスリン抵抗性が大きい人は、低糖質食を選んだ方が利益は大きいという仮説を立て、INS-30(75gブドウ糖負荷から30分後の血中インスリン濃度)を測定し、各食事法の減量効果に及ぶ影響を検討することとした。

 健康な食事に関する専門家が、約17人からなる小グループセッションを12カ月間に22回(当初8週間は毎週1回、その後2カ月間は隔週で行い、それ以降は3週ごと、月1回と頻度を減らした)行い、HLFとHLCのための食生活の改善方法をそれぞれ教育した。例えばHLF群では、食用油、肉の脂身、乳製品、ナッツなどの割合を減らすように、HLC群ではシリアル、穀物、米、デンプン含有量の多い野菜や豆の割合を減らすように指導を受けた。

 どちらのグループにも、野菜の摂取量を最大限に増やし、砂糖、精製小麦粉、トランス脂肪酸の摂取を最小にして、加工食品ではなく、栄養価の高い食材を選んでできるだけ自宅で調理するよう指示した。運動も推奨した。さらに、ダイエットの継続には、意識を高め、社会的認知理論に基づく自己制御による行動修正が必要であることを強調した。

 主要評価項目は、12カ月間の体重の変化に設定、さらに、各食事法の減量効果と遺伝子型、インスリン分泌の間に有意な関係が有るかどうかを検討した。

 609人のうち244人(40%)が低脂肪ジェノタイプで、180人(30%)が低糖質ジェノタイプだった。HLF食群では、130人(42.6%)が低脂肪ジェノタイプ、83人(27.2%)が抵糖質ジェノタイプだった。HLC食群では114人(37.5%)が低脂肪ジェノタイプ、97人(31.9%)が低糖質ジェノタイプだった。ベースラインでのINS-30の平均は93μIU/mLで、481人(79%)が12カ月まで試験を完了した。

 ベースラインと介入期間の両群のエネルギー摂取量に差はなかった。エネルギー摂取量を減らすように指示したわけではないが、両群ともに介入期間を通じて、摂取量はベースラインより1日当たり500~600kcal少なくなっていた。HLF食とHLC食を比較すると、主要栄養素の総エネルギーに対する割合は、糖質がそれぞれ48%と30%、脂質は29%と45%、蛋白質は21%と23%だった。

 12カ月間の体重の変化は、HLF食群が-5.3kg(95%信頼区間-5.9から-4.7kg)、HLC食群は-6.0kg(-6.6から-5.4kg)で、両群間の平均差は0.7kg(-0.2から1.6)と、有意ではなかった。

 体重減少に対する遺伝子型の影響は見られなかった。低脂肪ジェノタイプ、低糖質ジェノタイプ、どちらにも該当しないタイプ、のどの群も、HLF食とHLC食で12カ月後の体重減少に有意差は見られなかった。遺伝子型のβ係数は1.38(-0.72から3.49)だった。

 同様に、インスリン分泌能で三分位群に分けて、HLF食群に割り付けられた人と、HLC食群に割り付けられた人の12カ月後の体重減少を比較したが、有意差は見られなかった。β係数は0.08(-0.13から0.28)だった。

 入院が必要な重篤な有害事象は試験中に7件発生したが、このうち2件(腎結石と憩室炎による手術)が試験に関係ありと判断された。11件の有害事象のうち9件が試験に関係ありと判定された(ブドウ糖負荷試験後の高血糖など)。両群の発生率には差はなかった。

 これらの結果から著者らは、HLF食とHLC食の減量効果に有意差は見られず、遺伝子型やベースラインのインスリン分泌能は、これら食事法による体重減少効果に有意な影響を及ぼしていなかったため、誰にどの食事療法を勧めるかの判断には役に立たないと結論している。