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メトホルミンで腸内細菌叢が変化

こんにちは、今回は糖尿病治療薬のメトホルミンについての話題です。従来の血糖降下作用以外に数多くの良い作用があることがこれまでに報告されており、また安全性も高いことから糖尿病治療の第一選択薬として使用されることが多い薬剤です。今回の文献ではインスリン抵抗性が高く空腹時の血中インスリン濃度が高い肥満の成人にメトホルミン治療を行ったところ腸内細菌叢に変化が現れインスリン抵抗性が改善するという可能性が示唆されています。

Metformin Affects Gut Microbiome Composition and Function and Circulating Short-Chain Fatty Acids: A Randomized Trial.
Mueller NT, et al.  Diabetes Care. 2021 May 18.

過体重または肥満の成人121例を対象に、メトホルミン治療とコーチ主導による行動的減量法による腸内細菌叢と短鎖脂肪酸への影響を12カ月間の3群並行無作為化試験で検討。固形腫瘍の治療歴がある参加者をメトホルミン群、行動的減量群、自主的ケアの対照群に割り付けた。アンプリコンおよびメガゲノミクスシーケンス法で腸内細菌叢を解析した。
 その結果、メトホルミン群のみで細菌叢組成が有意に変化した。メトホルミン群では対照群に比べて、6カ月および12カ月でEscherichia属とRuminococcus torquesのアンプリコンシーケンスバリアント(amplicon sequence variant:ASV)増加およびIntestinibacter bartlettiiのASV減少、12カ月でRoseburia属のASV減少が認められた。メトホルミン群では対照群に比べて、6カ月時の酪酸塩、酢酸塩、吉草酸塩も増加した。行動的減量群では対照群に比べて、細菌叢組成の有意な変化は見られなかったが、6カ月時の酢酸塩が増加した。酢酸塩の増加があると空腹時インスリン値が低下した。