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脂質異常症治療による心血管疾患予防効果は有害事象のリスクを上回る

こんにちは、脂質異常症は悪玉のLDLコレステロールが高かったり、善玉のHDLコレステロールが低い状態で健康診断で異常を指摘されることが多い疾患です。放置すれば心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患の発症を生じるため治療が必要です。生活習慣の改善を目指すとともにスタチンという治療薬が必要となることが多いのですが、これまで数多くの論文でスタチンによる心血管疾患の予防効果が報告されています。今回の文献ではスタチンの1次予防は有害事象のリスクを上回っており心血管疾患の既往のない人も積極的に脂質異常症に対して治療した方が良いことを示唆しています。


Associations between statins and adverse events in primary prevention of cardiovascular disease: systematic review with pairwise, network, and dose-response meta-analyses.
Cai T, et al.  BMJ. 2021; 374: n1537.

 心血管疾患の1次予防で見られるスタチンと有害事象の関連性を系統的レビューとメタ解析で検討。心血管疾患歴のない成人でスタチン投与の有無やスタチンの種類または投与量別に比較した無作為化比較試験(62試験、12万456例、平均追跡調査期間3.9年)を組み入れ、よく見られる有害事象を評価した。
 その結果、スタチンで自己報告による筋症状(21試験、オッズ比1.06、95%CI 1.01-1.13、絶対リスク差15、95%CI 1-29)、肝機能障害(21試験、同1.33、1.12-1.58、8、3-14)、腎機能不全(8試験、同1.14、1.01-1.28、12、1-24)、眼症状(6試験、同1.23、1.04-1.47、14、2-29)のリスクが上昇したが、臨床的に確認された筋疾患や糖尿病のリスクは上昇しなかった。このようなリスクが、主要心血管イベントのリスク低下を上回ることはなかった。アトルバスタチン、lovastatin、ロスバスタチンにはそれぞれ一部の有害事象との関連が認められたが、スタチンの種類による有意差はほとんどなかった。アトルバスタチンが肝機能障害に及ぼす影響は、Emaxで用量反応関係が認められたが、他のスタチンと副作用の用量反応関係については結論が出なかった。