健診の要観察は放置NG?数値の意味と受診の目安を内科医が解説

ブログ blog

健診の要観察は放置NG?数値の意味と受診の目安を内科医が解説

健診の要観察は放置NG?数値の意味と受診の目安を内科医が解説

「要観察」の一言に立ち止まったあなたへ


健診結果に「要観察」と印字され、大したことはないと思いつつ気にかかっている方は少なくありません。自覚症状がなくても、数値は身体の変化を映すことがあります。要観察は、病名がつく前に生活を見直せる段階と考えられています。 判定区分の意味と項目別の数値の目安、受診を検討する際の考え方を、内科医の視点で整理しました。


この記事の要点まとめ


  • 要観察は病態が確定する前の段階であり、生活習慣を見直す目安と捉えられます。
  • 血糖や血圧などの軽度な変化は無症状のことも多く、経年推移の確認が役立ちます。
  • 数値の上昇傾向や複数項目の重なりがある際は、内科への相談も選択肢となります。

健康診断の「要観察」とは?異常なしや再検査との判定区分の違い

健康診断の「要観察」とは?異常なしや再検査との判定区分の違い

判定区分が示す医学的な段階と「要観察」の位置づけ


健診結果の判定は、多くの施設でA(異常なし)、B(軽度の変化・要観察)、C(要再検査・要経過観察)、D(要精密検査・要医療)、E(治療中)といった区分で示されます。区分名や記号は実施機関ごとに異なるため、結果表の凡例欄には一度目を通しておいてください。


このうち要観察(要経過観察)は、基準範囲をわずかに外れているものの、その時点では精密検査や治療が必要とは判断されていない段階を指します。いわば、病名が確定していないグレーゾーン。要再検査は「その数値をもう一度測り直す」段階、要精密検査は「原因を調べるために詳しい検査を行う」段階、要医療(要治療)は「医師の診察と方針の検討が必要」な段階、と並べて考えると整理しやすいでしょう13


「様子見でよい」という誤解と放置が招く疾患進行のリスク


「様子を見ましょう」と記載されるのには理由があります。単発の数値だけでは病態を判断しきれず、日々の変動や測定条件にも左右されるからです。つまり「何もしなくてよい」ではなく、「観察しながら生活を整える期間」という意味合いと受け取っていただくとよいと思います。


血糖や脂質、血圧の軽い乱れは、自覚症状をほとんど伴いません。それでも血管の内壁や膵臓、肝臓にはわずかな負担が積み重なると考えられており、生活習慣病やメタボリックシンドロームは自覚のないまま進むことがあると報告されています1。放置せず、記録を残しながら次の一手を考えておきたいところです。


要観察が出やすい主な検査数値の意味と身体への影響

要観察が出やすい主な検査数値の意味と身体への影響

空腹時血糖やHbA1cの軽度上昇が示す糖代謝異常の兆候


空腹時血糖は一般に100〜109mg/dLが正常高値、110〜125mg/dLが境界域として扱われ、HbA1cでは5.6〜6.4%前後が「高め」と指摘されやすい範囲とされます。この段階では、食後の血糖上昇に対してインスリンを分泌する膵臓の働きに負担がかかり始めていると考えられています。40代以降は筋肉量の減少や内臓脂肪の増加が重なるため、食習慣が変わらなくても数値は動きやすくなる傾向があります14


LDLコレステロールや中性脂肪の乱れと動脈硬化の進展


LDLコレステロールは120〜139mg/dLが境界域、140mg/dL以上で脂質異常症の基準に該当し、中性脂肪は150mg/dL以上が指摘の対象とされています。脂質の乱れは症状として表に出にくい一方、血管の内壁にプラークが形づくられる過程は静かに進むと考えられています4。喫煙や高血圧、血糖高値が重なるほど、血管への負担は積み上がりやすいとされる点も念頭に置いておきたいところです。


血圧や肝機能(AST・ALT・γ-GTP)の境界域数値


血圧は130〜139/80〜89mmHgが高値血圧とされ、要観察になりやすい領域。肝機能ではAST・ALTが31〜50U/L程度、γ-GTPが51〜100U/L程度で指摘されることが多く、背景として飲酒量だけでなく内臓脂肪の蓄積(脂肪肝)や疲労、内服薬の影響なども挙げられます。尿酸値7.0mg/dL超や心電図の軽度変化も、要経過観察となりやすい項目です13


当院は内科・内分泌内科を掲げ、健診で血糖高値を指摘された方の血糖変動の把握についてもご相談を受けています。当クリニックでは間歇スキャン式持続血糖測定器を選定療養としてご案内しており、日々の生活と数値の関係を見える形にする選択肢のひとつとしてご検討いただけます。


無症状でも受診を検討すべき目安と内科への相談基準


単年度の判定だけでなく過去からの経年推移で判断する視点


健診結果は「点」ではなく「線」で読むことをおすすめしています。過去3〜5年分の結果表を並べてみて、同じ項目が毎年少しずつ上がっているようなら、判定が要観察でも相談しておく価値はあると考えられます。単年度は軽度でも、右肩上がりの推移は身体の変化の方向を示すサインになり得るからです。


さらに、複数の項目が同時に指摘されたとき(血糖+脂質、血圧+腹囲など)は、メタボリックシンドロームの観点からまとめて評価しておくと、今後の見通しを考えやすくなります。強い喉の渇き、体重の急な変化、動悸、息切れ、階段での胸の圧迫感などがある場合は、判定にかかわらず早めの受診をご検討ください23


生活習慣の改善に取り組み次回の健診を待つ場合の条件


セルフケアで経過をみる目安として挙げられるのは、①指摘が1項目だけで基準範囲からの外れが軽度、②推移が横ばい、③自覚症状がない、④家族歴や喫煙などの要因が少ない、この4点がそろう場合です。食事はまず主食量と間食・飲酒の見直しから。野菜や食物繊維を先に食べる工夫も取り入れやすいでしょう。運動は早歩き20〜30分を週3回程度が、現実的な出発点になると考えられます1


ただし再確認までを1年後の次年度健診まで空けず、3〜6か月後に一度採血で確かめておくほうが、変化を捉えやすいと考えています。


医療機関を受診するタイミングと持参すべき健診結果表


受診の際は、健診結果表の原本(できれば過去数年分)、お薬手帳、健康保険証またはマイナ保険証をご持参ください。結果表が手元にあると、当日の検査項目を絞り込みやすく、説明もスムーズに進みます。健診結果に基づく相談や再検査は、医師が必要と判断した検査であれば保険診療の対象となるのが一般的です(自治体の健診そのものは自費や補助の扱いになります)。


項目別の窓口としては、血糖・脂質・血圧・肝機能・尿酸なら内科や内分泌内科、心電図の変化は循環器内科、便潜血陽性は消化器内科が中心となります。迷ったときは、まずかかりつけの内科で相談し、必要に応じて紹介を受ける流れが分かりやすいと思います34。当院では明細書を無償で発行し、算定内容をご確認いただける体制を整えています。


よくある質問


Q1. 健康診断結果の「経過観察」とはどういう意味ですか?

A. 基準範囲からわずかに外れているものの、その時点では精密検査や治療が必要と判断されていない段階を指します。何もしなくてよいという意味ではなく、生活習慣を整えながら数値の推移を確かめていく期間、と捉えてください。


Q2. 心電図で「要経過観察」と言われたらどうすればよいですか?

A. 心電図は体格や測定条件によっても波形が変わるため、軽度の変化は経過観察となることがあります。胸の痛みや圧迫感、動悸、息切れ、めまいなどがあるとき、以前と所見が変わっているときは、循環器内科での確認をご検討ください。


Q3. 健康診断で指摘されたとき、特に注意した方がよい項目はどれですか?

A. 一律に順位づけはできませんが、血糖・血圧・脂質・肝機能・便潜血・胸部画像の所見は、自覚症状が乏しいまま進むことがあるため確認をおすすめしています。複数の項目が重なっている場合は、まとめて評価を受けると整理しやすくなります。


Q4. 「要医療」と判定された場合はどうしたらよいですか?

A. 医師の診察が必要と判断された状態です。結果表を持参して、できるだけ早めに内科などを受診してください。一度評価を受けておくことで、必要な検査や今後の方針を検討しやすくなります。


Q5. 要観察の段階で受診すると費用は自費になりますか?

A. 健診結果をもとに医師が必要と判断した診察・検査は、保険診療として扱われるのが一般的です。ご不明な点は受付でお尋ねください。


参考文献


1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/

2. 厚生労働省(政策・健康情報の入口) https://www.mhlw.go.jp/

3. 日本医師会 https://www.med.or.jp/

4. 日本内科学会 https://www.naika.or.jp/


清水 裕史

医師


清水ヶ岡クリニック

院長

清水 裕史

▶ 監修者プロフィール

経歴
1999年 名古屋大学医学部卒業
1999年 春日井市民病院研修医
2001年 春日井市民病院内科
2005年 名古屋大学大学院医学系研究科
2009年 米国シンシナティ大学留学
2011年 ひまわりクリニック
    大雄会ルーセントクリニック
2012年 千秋病院、済衆館病院
2013年 あおい在宅診療所
2016年 公立西知多総合病院 内分泌・代謝内科部長
2018年 独立行政法人地域医療機能推進機構
    中京病院内分泌・糖尿病内科診療部長兼
    糖尿病センター長
2020年 清水ヶ岡クリニック開院
資格・所属学会
【資格】
医学博士
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
日本糖尿病学会専門医
日本医師会認定産業医
【所属学会】
日本内科学会
日本糖尿病学会
日本内分泌学会