ブログ blog

超加工食品の摂り過ぎは発癌リスクを増やす

こんにちは、本日は食事に関する論文を紹介します。加工食品はしっかり包装されていたり日持ちもするため非常に便利ですが多く摂りすぎると健康障害を生じることはわかっていました。今回の文献では超加工食品の摂り過ぎは乳癌等の発癌リスクを増加させることが報告されています。

詳しい内容は以下を参考にして下さい。
Consumption of ultra-processed foods and cancer risk: results from NutriNet-Sante prospective cohort
T Fiolet et al.  BMJ. 2018 Feb 14;360:k322

フランス国立保健医学研究所(INSERM)のThibault Fiolet氏らは、砂糖や油脂、塩を多く含み、保存料などが添加されており、きっちり包装されて日持ちも良い、超加工食品(ultra-processed foods)の摂取レベルと癌の関係を調べるプロスペクティブなコホート研究を行い、超加工食品の摂取量が多いとあらゆる癌乳癌のリスクが有意に高まると報告した。

 超加工食品がいくつかの疾患、特に癌のリスクを上昇させるのではないかという懸念が高まっている。超加工食品はしばしば、総脂肪、飽和脂肪酸、砂糖、塩の含有量が高く、食物線維とビタミンが少ない。また、加熱によってメイラード反応が生じ、発癌性があるアクリルアミドやヘテロサイクリックアミン、多環芳香族炭化水素が生成しやすい。さらに、食品と接触する包装材料に発癌性を有する物質や内分泌障害物質などが含まれている可能性がある。

 超加工食品の範囲はNOVA分類を用いた。NOVAは、食品の加工を目的と程度に基づいて分類するもので、厳密な定義ではない。超加工食品の例は、大量生産され包装されたパン、甘いまたは塩味の包装されたスナック、大量生産された菓子やデザート、炭酸飲料や加糖飲料、ミートボール・チキンナゲット・フィッシュナゲット・保存料を添加した肉加工品、即席麺・即席スープ、冷凍食品・常温保存可能な調理済み食品、家庭で調理する際には加えない添加物(水素添加油脂、加工澱粉、蛋白質加水分解物など)や砂糖や油脂などを非常に多く含む食品だ。ここに分類される食品には、水素添加・加水分解・成形・下揚げといった処理や、香料、色素、乳化剤、人工甘味料などの添加が施されている。

 NOVA分類はそれ以外の食品群を、未加工またはわずかに加工されている食品(野菜・果物、豆類、米、パスタ、卵、肉、魚、ミルクを含む)、家庭で調理に使う材料(塩、植物油、バター、砂糖など)を使って最少限の加工がなされた食品、加工食品(塩分を添加された野菜の缶詰、砂糖でコーティングされたドライフルーツ、塩蔵肉、チーズ、包装されていない焼きたてパンや、砂糖、塩などの家庭で調理に使う材料のみをある程度添加した食品)に分類している。

 2009~17年のFrench NutriNet-Santeコホートから10万4980人(年齢の中央値は42.8歳、21.7%が男性で78.3%が女性)の情報を得た。French NutriNet-Santeスタディは、栄養と健康の関係を調べることを目的として現在も進行中のウェブベースのコホート研究だ。18歳以上の参加者を募集し、ベースラインで社会人口学的特徴、身長と体重、年齢、性別、職業、学歴、喫煙習慣、子どもの数、身体活動量、健康状態などを尋ねた。

 食習慣に関する調査は、季節による変化を考慮して6カ月毎に複数回行った。ランダムに割り当てられた2週間の中から、平日の2日と週末の1日について、24時間に食べた食品を、3300種類の食品から選んで回答してもらった。最初の2年間に2回以上の回答記録がある参加者を分析に含め、ベースラインの食生活とした。参加者の食生活に占める超加工食品の摂取量は、人工甘味料などノンカロリーのものがあることを考慮し、エネルギー比ではなく重量比で換算した。その上で、超加工食品の摂取量が食品の総重量に占める割合に基づいて、参加者を四分位群に分け、癌との関係を調べることとした。

 参加した10万4980人のうち、男性は2万2821人(21.7%)で、女性が8万2159人(78.3%)、平均年齢は42.8歳だった。最初の2年間に平均5.4回分の食事記録を提出していた。四分位群で、超加工食品の摂取量が最も多い群は少ない群に比べ、年齢が若く、喫煙者が多く、学歴が低く、癌の家族歴が少なく、身体活動度が低い傾向を示した。

 食品群別に超加工食品の摂取割合を調べたところ、最も多く摂取されていたのは、砂糖を多く含む加工食品(26%)、飲料(20%)、澱粉質の多い食品と朝食用シリアル(16%)、過度に加工された野菜・果物(15%)となっていた。

 中央値5年、累計42万6362人・年の追跡で、2228人が初回の癌と診断されていた。うち739人が乳癌(閉経前の乳癌が264人、閉経後は475人)、281人が前立腺癌、153人が大腸癌だった。追跡期間中の離脱者は6.7%だった。

 超加工食品の摂取は、あらゆる癌のリスク上昇に関係していた。超加工食品摂取量が食品全体に占める割合が10ポイント増加する当たりの多変量調整ハザード比は1.12(95%信頼区間1.06-1.18)だった。同様に乳癌のハザード比は1.11(1.02-1.22)になり、閉経前乳癌では1.09(0.95-1.25)、閉経後の乳癌は1.13(1.01-1.27)で、後者が有意な関係を示した。超加工食品の摂取量と前立腺癌、大腸癌の間に有意な関係は見られなかった。

 超加工食品の摂取量とあらゆる癌の間の関係は、サブグループでも同様だった。ハザード比は男性1.12(1.02-1.24)、女性1.13(1.06-1.20)、年齢40歳未満1.21(1.09-1.35)、40歳以上1.09(1.03-1.16)、喫煙者1.18(1.04-1.33)、非喫煙者1.11(1.05-1.17)、活動量が中等度以下1.07(1.00-1.15)、活動量高度1.19(1.09-1.30)などだった。

 これらの結果から著者らは、食生活に占める超加工食品の割合が10ポイント増加すると、あらゆる癌と乳癌のリスクが10%超上昇していた。超加工食品の摂取が急速に増えていることから、さらに研究を進めて、食品加工の多様な面(栄養の組成、食品添加物、包装素材など)がこの関係に及ぼす影響を調べる必要があると結論している。