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飲酒量の目安は1週間でエタノール100g以下

こんにちは、今回はアルコールに関しての文献を紹介します。少量の飲酒は健康に良いという報告はたくさんありますが、多量摂取すれば健康障害を生じてしまいます。どのくらいが適量なのかは個人差や人種、性差などさまざまな影響を受けますが飲酒量は多くてもエタノール換算で1週間に100gまで(ビール500mlなら5本まで)のようです。飲み過ぎには注意しましょう。

詳しい内容は以下を参考にしてください
Risk thresholds for alcohol consumption: combined analysis of individual-participant data for 599 912 current drinkers in 83 prospective studies
Wood AM et al.  Lancet2018 Apr 14;391(10129):1513-1523.

健康的な飲酒量のガイドラインは、国によって大きくばらついている。総死亡と心血管イベントのリスクを指標に安全なアルコール摂取量を明らかにしようと考えた英Cambridge大学のAngela W Wood氏らは、総死亡についてはおおよそ100g/週が上限の目安となりそうだが、心血管イベントについては、明瞭な閾値は見いだせなかったと報告した。詳細はLancet誌2018年4月14日号に掲載された。

 米国では、健康へのリスクが少ない飲酒量の上限を、男性が196g/週、女性は98g/週に設定している。カナダとスウェーデンも同様の値を用いている。が、イタリア、ポルトガル、スペインは、米国のおおよそ1.5倍を上限としている一方で、英国は、男性の上限を米国の約半分に設定している。

 そこで著者らは、世界各国で行われているプロスペクティブなコホート研究で、現在飲酒者のアルコール摂取量を定量的に評価している研究データを統合して、総死亡リスクと心血管イベントリスクが最低になる飲酒レベルの分析を試みることにした。現在飲酒者に限定したのは、過去の飲酒者を含めると、過剰飲酒のために健康を害してやむなく禁酒した人や、飲酒量を減らして生活習慣を改善した人が混じるため、解釈が面倒になるからだ。

 分析に用いたのは、高所得国19カ国の住民を対象とする3つの大規模な研究コンソーシアム(Emerging Risk Factor Collaboration、EPIC-CVD、UK Biobank)に参加していた人のコホートデータ。現在飲酒者であり、年齢、性別、糖尿病歴、喫煙習慣が明らかで心血管疾患歴がなく、ベースラインから最低1年間追跡されていた男女を、飲酒量に基づいて分類した。各種のアルコール飲料は、純粋エタノール8g相当を1単位として換算した。

 ベースラインの飲酒量(1週間のアルコール摂取量)に基づいて以下の8群に分けた。0~25g以下、25~50g以下、50~75g以下、75~100g以下、100~150g以下、150~250g以下、250~350g以下、350g超。その上で、総死亡、あらゆる心血管イベント、特定の心血管イベントの有無を調べ、アルコール摂取量との用量反応関係を検討した。実施施設や、年齢、性別、喫煙、糖尿病などを補正して、1週間のアルコール摂取量が100g増加当たりのハザード比を推定した。

 コンソーシアムに参加していた78万6787人のうち59万9912人が現在飲酒者だった。ベースラインの平均年齢は57歳、女性が44%、21%が現在喫煙者だった。約50%が週に100gを超えるアルコールを摂取しており、8.4%は摂取量が350gを超えていた。

 中央値7.5年、540万人・年の追跡で、4万310人が死亡しており(1万1762人が血管死亡、1万5150人が癌死亡)、3万9018人が心血管イベントを経験していた。心血管イベントの内訳は、脳卒中が1万2090件、心筋梗塞が1万4539件、心筋梗塞を除く冠動脈疾患が7990件、心不全が2711件、他の心血管疾患による死亡が1121件だった。

 総死亡は、アルコール摂取量が増加するにつれて曲線的に上昇していた。死亡リスクは、摂取量が100g/週以下では摂取量に応じた有意な変化を示さず、100g/週以下の集団の死亡リスクが最低となった。男女別に分析しても結果は同様だった。

 総死亡リスクとアルコール摂取量の関係は、ワインを飲む人に比べ、ビールまたはスピリッツの飲む人のほうが、また、1週間あたりの飲酒量は同じでも飲酒頻度が低い人(1回あたりの飲酒量が多い人)の方が、強力だった。あらゆる心血管イベントについては、横軸をアルコール摂取量、縦軸をハザード比とすると、J字型の直線になった。

 個々の心血管イベントとアルコール摂取量の関係を調べたところ、以下のイベントとの間に正の相関が見られた。アルコール摂取量が100g/週増加当たりのハザード比は、脳卒中が1.14(1.10-1.17)、心筋梗塞以外の冠動脈疾患は1.06(1.00-1.11)、心不全は1.09(1.03-1.15)、致死的高血圧は1.24(1.15-1.33)、致死的大動脈瘤は1.15(1.03-1.28)だった。脳卒中をさらに、致死的脳卒中(ハザード比1.14、1.10-1.18)、非致死的脳卒中(1.13、1.07-1.19)、虚血性脳卒中(1.13、1.09-1.18)、出血性脳卒中(1.17、1.12-1.23)、くも膜下出血(1.09(1.00-1.19)に分けても、アルコール摂取量との関係は一貫して認められた。心筋梗塞以外の冠動脈疾患については、非致死的イベント(1.00、0.97-1.03)と致死的イベント(1.11、1.04-1.18)に分けると、後者のみ差が有意になった。

 一方で、アルコール摂取量と心筋梗塞の間には、対数線形関係が見られた。アルコール摂取量が100g/週増加あたりのハザード比は0.94(0.91-0.97)になった。非致死的心筋梗塞のハザード比は0.93(0.90-0.97)、致死的心筋梗塞では0.99(0.93-1.05)だった。

 40歳時点の余命を、飲酒量が100g/週以下の集団(平均摂取量は56g/週)を参照群として比較すると、100g~200g/週以下の集団(平均摂取量は123g/週)では6カ月、200~350g/週以下の集団(平均摂取量は208g/週)では1~2年、350g/週超の集団(平均摂取量は367g/週)では4~5年短いと推定された。

 アルコール摂取量が、英国のガイドラインの上限値である112g/週を超える男性では、上限値以下の集団に比べ、40歳時点で余命が1.6年短く、米国のガイドラインの上限値である196g/週を超える男性では、それ以下の集団に比べ2.7年短いと推定された。

 同様に女性では、英国のガイドラインの上限値である112g/週を超える人と、米国のガイドラインの上限値である98g/週を超える人の40歳時点の余命は、それらの上限値以下の集団に比べいずれも1.3年が短くなると推定された。

 これらの結果から著者らは、高所得国の現在飲酒者では、総死亡リスクが最も低くなる飲酒量はおおよそ100g/週以下だった。個々の心血管イベントのリスクについては、いずれも明瞭な閾値を見いだせなかったが、多くの国で現在用いられているガイドラインが示す安全な飲酒量の上限を引き下げる必要があることを示唆したと結論しています。