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白米摂取は糖尿病リスクを高める?

こんにちは、本日は白米摂取量と糖尿病発症に関しての文献を紹介いたします。結論としては白米の多量摂取は糖尿病発症を高める可能性があるため玄米や雑穀米、豆類などに置き換えると良いようです。以下が詳細な研究の内容となりますので参考にしてください。

論文:Bhavadharini B, et al. White rice intake and incident diabetes: a study of 132,373 participants in 21 countries. Diabetes Care. 2020:43:2643-50.

白米摂取量と糖尿病の発症リスクの関連について大規模な多国間の疫学研究で検討された。コホート全体では、白米摂取量が1日茶わん3杯以上の場合は、1杯未満の場合よりも糖尿病リスクが有意に上昇していた。地域別にみると、インドなどの南アジアでは有意なリスク上昇が示されたが、中国ではリスク上昇は認められなかった。

 米を主食とする中国とインドは、世界で最も糖尿病患者数が多い国である。インドでは、精白度の低い米から白米に食文化が変化したここ数十年で糖尿病の有病率が上昇している。白米摂取量と糖尿病発症に関するこれまでの研究では、摂取量が多いと発症リスクが上昇するという報告もあれば、上昇しないという報告もあり、一貫した結果が得られていない。例えば、中国、日本、米国、オーストラリアで行われた4件の研究の結果を統合したメタ解析では、白米を1杯追加するごとに糖尿病リスクが11%上昇することが示されている。一方、シンガポールの4万5000例を超える参加者を対象とした大規模な前向きコホート研究では、白米摂取量が多くても(500g/日超)、糖尿病の発症リスクは上昇しないことが報告されている。また、これまでの前向き研究は白米摂取量の多いアジアの1つの国だけで実施されたものが多く、多国間での研究は少ない。

 そこで著者らのグループは、アジア、中東、南米、北米、欧州、アフリカの21カ国で、大規模な多民族・多国間のProspective Urban Rural Epidemiology(PURE)研究を実施。白米摂取量と糖尿病発症リスクの関連を評価した。

 解析対象はベースライン時に糖尿病を発症していなかった13万2373例。年齢は35~70歳(平均年齢:50±9歳)だった。食事に関するデータは、ベースライン時に食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて収集した。主要アウトカムは糖尿病の発症。2019年7月3日までに発生したアウトカムを解析に含めた。平均追跡期間は9.5年だった。

 茶わん1杯の米飯は約150gのため、白米摂取量を150g/日未満、150g/日以上~300g/日未満、300g/日以上~450g/日未満、450g/日以上の群に層別化した(それぞれ茶わん1杯未満、1~2杯、2~3杯、3杯以上に相当する)。摂取量が最も少ない150g/日未満群を参照群とした。白米摂取量と糖尿病発症との関連については、コホート全体、また南アジア(インド、バングラデシュ、パキスタン)、中国、それ以外の地域(東南アジア、中東、南米、北米、欧州、アフリカ)のそれぞれで検討した。多変量Cox frailtyモデルを用いて、ハザード比(HR)を算出し、年齢、性別、BMI、ウエスト・ヒップ比、糖尿病の家族歴、喫煙、地域、教育、身体活動などで補正した。

 コホート全体の白米摂取量の中央値(四分位範囲[IQR])は128(36-400)g/日だった。白米摂取量の中央値(IQR)が最も高かったのは630(103-952)g/日の南アジアだった。次いで、239(115-389)g/日の東南アジア、200(57-600)g/日の中国だった。白米摂取量が多い群ほど、他の多くの食品(例えば全粒および精製小麦製品、食物繊維、赤身の肉、乳製品など)の摂取量が少なかった。

 追跡期間中に、6129例が新規に糖尿病を発症した。白米摂取量450g/日以上と150g/日未満を比較したところ、コホート全体では、白米摂取量が多いと、糖尿病の発症リスクが有意に高かった(HR:1.20、95%CI:1.02-1.40、P for trend=0.003)。地域別では、リスクが最も高かったのは南アジアだった(HR:1.61、95%CI:1.13-2.30、P for trend=0.02)。次にリスクが高かったのは東南アジアなどのそれ以外の地域だった(HR:1.41、95%CI:1.08-1.86、P for trend=0.01)。一方、中国では白米摂取量と糖尿病リスクの関連は有意ではなかった(HR:1.04、95%CI:0.77-1.40、P for trend=0.38)。

 最近の研究では、通常の精白米よりも食物繊維が豊富な品種の白米では血糖上昇指数(GI)が低いことが示されている。24時間の血糖反応を評価する持続血糖モニタリング研究では、この高繊維な白米により、24時間の血糖反応が34%、平均血漿インスリン値が30%低下することが示された。

 著者らは以上のことから、精白米が食事のカロリーの大半(70%超)である国々では、糖尿病リスクを低下させる方法として、主食の白米を精白度の低い玄米やより健康的な米の品種、または他の穀類に替えることは、現実的な選択肢となりえるだろう、と述べている。また、全ての豆類はGIが低いため、米に豆類を加えることで食物繊維と蛋白質の含有量が増加するだけでなく、米を含む食事全体のGIが低下する。さらに実際の白米摂取量も減らすことができるだろう、と著者らは指摘する。

 このような方法は、南アジアをはじめとして白米が主食の地域で導入できる公衆衛生の戦略となる可能性がある。さらにこの戦略と身体活動を高める対策を組み合わせれば、米を主食とする地域での2型糖尿病発症率の急速な上昇を鈍化させる一助となりえる、と著者らは提唱している。