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1日1本の喫煙でも心血管リスクは大きい

こんにちは、今回は喫煙に関しての文献を紹介します。喫煙は動脈硬化のリスク因子の一つです。タバコの本数を減らすだけでは、そのリスクを下げられないため禁煙が重要となります。

以下が詳しい論文の内容になります。
Low cigarette consumption and risk of coronary heart disease and stroke: meta-analysis of 141 cohort studies in 55 study reports
Hackshaw A et al. BMJ. 2018 Nov 28;363:k5035. 

喫煙者はしばしば、喫煙量を減らすことでリスクも下げられると考えがち。英国University College LondonのAllan Hackshaw氏らは、喫煙冠動脈疾患脳卒中のリスクを調べたコホート研究の系統的レビューとメタアナリシスを行い、1日1本でも喫煙する人は1日20本吸う人に比べ、半分程度のリスク上昇があると報告した。

 これまでに行われた研究で、肺癌については1日の喫煙本数と発症リスクの間にほぼ直線的な関係が見られており、1日に20本喫煙する人に比べ1本しか吸わない人のリスクは約20分の1(5%)であることが報告されている。しかし、その他の喫煙関連疾患では、リニアな用量反応関係は示されていない。そこで著者らは、1日の喫煙量が1~5本のライトスモーカーの冠動脈疾患と脳卒中のリスクを検討するために、系統的レビューとメタアナリシスを計画した。

 1946年から2015年5月までにMedlineに登録された英語の論文の中から、前向きコホート研究で、50件以上の心血管イベントが発生しており、冠疾患または脳卒中のリスクを喫煙歴のない基準群と、喫煙本数を3カテゴリー以上設けて比較し、ハザード比または相対リスクを報告していた研究を選んだ。既に心疾患の治療薬を服用しているようなハイリスク患者を対象にした研究は除外した。喫煙本数が増えているのに、見かけ上の相対リスクが減少していた6件の研究も除外した。MOOSEガイドラインにしたがってメタアナリシスを実施し、喫煙本数が1日1本、1日5本、1日20本の人の相対リスクを推定した。

 条件を満たした55本の論文(141件のコホート研究を含む)のうち、26件の研究をプール化し、喫煙歴のない人を1.0とした冠動脈疾患の相対リスクを算出した。男性では、1日1本喫煙者が1.48(95%信頼区間1.30-1.69)、1日5本喫煙者は1.58(1.39-1.80)、1日20本喫煙者は2.04(1.86-2.24)だった。これらの結果に基づいて、冠動脈疾患の過剰相対リスクを推定したところ、1日1本喫煙者は1日20本喫煙者の46%(四分位範囲24~56%)リスクが増加しており、1日5本喫煙者は57%(36~64%)増加していると推定され、リスク減少は喫煙本数の減少に比例していなかった。

 同様に女性の冠動脈疾患のデータを報告していた18件の研究をプール化した相対リスクは、1日1本喫煙者が1.57(1.29-1.91)、1日5本喫煙者1.76(1.46-2.13)、1日20本喫煙者は2.84(2.21-3.64)だった。1日1本喫煙者の過剰相対リスクは、1日20本喫煙者の31%(2~46%)、1日5本喫煙者では43%(14~55%)だった。

 脳卒中については、17件の研究データをプール解析した男性における相対リスクは、1日1本喫煙者が1.25(1.13-1.38)、1日5本喫煙者は1.30(1.18-1.43)、1日20本喫煙者は1.64(1.48-1.82)だった。男性の1日1本喫煙者の脳卒中の過剰相対リスクは1日20本喫煙者の41%(-7から62%)、1日5本喫煙者は52%(9~70%)と推定された。

 10件の研究をプール解析した女性の脳卒中相対リスクは、1日1本喫煙者が1.31(1.13-1.52)、1日5本喫煙者は1.44(1.22-1.70)、1日20本喫煙者は2.16(1.69-2.75)だった。女性の1日1本喫煙者の脳卒中の過剰相対リスクは、1日20本喫煙者の34%(3~51%)、1日5本喫煙者は44%(16~60%)と推定された。

 冠動脈疾患について、コレステロール値を含む3種類以上の交絡因子を補正していた11件の研究と、それ以外の15件に分けてプール化した相対リスクを調べると、補正ありの研究では男性の1日1本喫煙者1.74(1.50-2.03)、補正なしの研究では1.36(1.18-1.56)となり、1日20本喫煙者の相対リスクはそれぞれ2.27(1.90-2.72)、1.89(1.71-2.08)だった。1日1本喫煙者の過剰相対リスクは、補正ありの研究が53%、補正なしの研究では36%と推定された。

 同様の傾向は、女性の冠動脈疾患、男性と女性の脳卒中でも見られた。女性の冠動脈疾患に対する1日1本喫煙者の過剰相対リスクは補正ありが38%、補正なしが25%。男性の脳卒中に対する1日1本喫煙者の過剰相対リスクは、補正ありが64%、補正なしが38%。女性の脳卒中に対する1日1本喫煙者の過剰相対リスクは、補正ありが36%、補正なしが15%だった。

 これらの結果から著者らは、喫煙本数が1日1本でも、冠動脈疾患と脳卒中のリスクは1日20本喫煙者のおおよそ半分程度だった。心血管疾患については安全な喫煙量は存在せず、リスクを減らすには禁煙が必要だと結論している。