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コーヒーの摂取量が多いと総死亡率が低くなる

みなさん、こんにちは。本日はコーヒーに関する文献を紹介します。TVや雑誌などでもコーヒーが体に良いとの情報をよくみかけますが、今回の論文ではコーヒー摂取が総死亡率を減らしたり肝機能を改善させるのみでなく、女性では炎症や糖尿病にも良い影響をあたえるようです。

以下が文献の内容となります。
Coffee Drinking and Mortality in 10 European Countries: A Multinational Cohort Study
Gunter MJ et al.  Ann Intern Med . 2017 Aug 15;167(4):236-247.

欧州10カ国でコーヒー摂取量と総死亡、死因特異的死亡の関係を調べた仏International Agency for Research on CancerのMarc J. Gunter氏らは、コーヒーを全く飲まない人に比べ、飲む量が多い人の総死亡率と消化器疾患死亡率が有意に低かったと報告した。

 コーヒーの摂取が人体に与える影響を調べた研究は多いが、最近では米国の研究で、コーヒー摂取量が多い人の総死亡率が減少することが報告された。しかし欧州ではコーヒー摂取量が死亡率に与える影響や、死因別死亡のリスクについて分析できるほど、規模が大きく信頼性の高い研究は行われていなかった。そこで著者らは、欧州に住む多様な集団におけるコーヒーの摂取量と総死亡、死因特異的死亡の関係を明らかにするために、10カ国で前向きコホート研究を実施した。

 対象は、EPIC(The European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition)スタディに参加した52万1330人の中から選んだ。EPICスタディは前向き多施設コホート研究で、欧州10カ国(デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、英国)の一般市民で、主に35歳以上の人を1992~2000年に募集していた。今回の分析は、癌や脳卒中、糖尿病などの既往がある患者や、コーヒー摂取量に関する情報が記録されていなかった患者などを除外し、条件を満たした45万1743人(男性13万662人と女性32万1081人)を対象に行った。

 コーヒーの摂取量は、食物摂取頻度調査または直接インタビューを行って調べた。また、ライフスタイル質問票を用いて、学歴、喫煙、飲酒習慣、身体活動量などに関する情報を収集した。

 ベースラインのコーヒーの摂取量に基づいて、国ごとに対象者を層別化した。まず、全く飲まないグループ(参照群)を除外し、残りの人々を四分位群にわけた。10カ国を併せると、たとえば第2四分位群の摂取量は、男性が300mL/日、女性は253mL/日、最高四分位群ではそれぞれ855mL/日と684mL/日だった。コーヒー摂取量が最も多かったのはデンマークで、中央値は男女ともに900mL/日、最も少なかったのがイタリアで、中央値は男性が91mL/日、女性は93mL/日だった。

 平均16.4年の追跡で、4万1693人(男性1万8302人、女性は2万3391人)が死亡していた。うち1万8003人が癌死亡で、9106人が循環器疾患、2380人が脳血管疾患、3536人が虚血性心疾患、1213人が消化器疾患、1589人が呼吸器疾患、1571人が外傷性の死亡で、418人は自殺により死亡していた。

 コーヒーを飲まない人に比べ、最高四分位群の総死亡リスクは有意に低かった。多変量Cox比例ハザードモデルを用いて推定した調整ハザード比は、男性が0.88(95%信頼区間0.82-0.95)、女性は0.93(0.87-0.98)だった。コーヒー1杯を237mLとすると、摂取が1カップ増加当たりのハザード比は、男性が0.97(0.96-0.98)、女性は0.99(0.98-1.00)になった。

 欧州では国ごとに、好まれるコーヒーの抽出方法が違っている。しかし、各国のコーヒー摂取量と総死亡との関係に差は見られなかった。不均一性のP値は、男性が0.71、女性は0.37だった。

 コーヒーの摂取は、消化器疾患による死亡のリスク低減とも関係していた。男性のハザード比は0.41(0.32-0.54)、女性では0.60(0.46-0.78)で、摂取が1杯増加当たりのハザード比は、男性が0.77(0.72-0.81)、女性は0.86(0.81-0.92)だった。

 消化器疾患死亡の3分の1強は肝疾患による死亡だった。男女合わせて分析したところ、コーヒーを全く飲まない人と比較した、最高四分位群の肝疾患死亡のハザード比は0.20(0.13-0.29)になった。一方で、肝疾患以外の消化器疾患による死亡のハザード比は0.81(0.56-1.16)と有意にならなかった。また、肝硬変による死亡のハザード比は0.21(0.13-0.34)で、アルコール性肝硬変と非アルコール性肝硬変のいずれも、同様のハザード比を示した。コーヒー摂取量が多い人の肝臓癌死亡リスクは男性のハザード比は0.54(0.36-0.81)、女性は0.61(0.38-0.97)だった。

 男性では以下の疾患との間に有意な関係は見られなかったが、女性では、コーヒーの摂取は、循環器疾患死亡(ハザード比0.78、0.68-0.90)、脳血管疾患死亡(0.70、0.55-0.90)のリスク低減と、癌死亡(1.12、1.02-1.23)と卵巣癌死亡(1.31、1.07-1.61)のリスク上昇に関係していた。

 以上のような関係は、カフェインを含むコーヒーと含まないコーヒーの摂取量を別個に分析するとやや弱くなったが、リスク低減傾向、リスク上昇傾向に変化はなかった。

 EPICスタディ参加者から無作為に選出されたEPIC Biomarkersサブコホートのうちの条件を満たした1万4800人を対象に、コーヒーの摂取と、血清中の肝機能、炎症、代謝のマーカーとの関係を調べた。コーヒー摂取量が多い集団では、血清アルカリホスファターゼ(ALP)、アラニンアミノ基転移酵素(ALT)、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)の値が有意に低く、女性ではC反応性蛋白質(CRP)、リポ蛋白(a)、糖化ヘモグロビン(HbA1c)低値との関係も有意だった。

 これらの結果から著者らは、コーヒーの摂取は総死亡率といくつかの死因による死亡率低下に関連しており、この傾向は国による違いはなかった。摂取量が多い人で、肝機能と炎症のバイオマーカーの値がより好ましい値を示していたことも、この仮説を支持したと結論している。