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サプリメントに死亡率減少効果はない

こんにちは、今日はサプリメントについての文献を紹介します。近年の健康ブームでCMなどでもサプリメントが紹介されることが多いですが、一定の効果はあるものの死亡率を指標とした時に良い影響を与えているかは疑問が残ります。今回の米国からの論文ではビタミンや微量元素はサプリメントからではなく食品から摂取したほうが良く、カルシウムに関してはサプリメントの過剰摂取でむしろ癌死亡率は上昇する可能性があるようです。

詳しい内容については以下を参考にして下さい。
Association Among Dietary Supplement Use, Nutrient Intake, and Mortality Among U.S. Adults: A Cohort Study
Chen F et al.  Ann Intern Med. 2019 May 7;170(9):604-613

サプリメントの使用が健康に及ぼす利益とリスクについては議論がある。米国Tufts大学のFan Chen氏らは、米国のNational Health and Nutrition Examination Survey(NHANES)のデータを分析して、食事から摂取した適量の栄養素は死亡リスクの減少につながるが、サプリメントの使用は死亡率に影響を与えておらず、過剰に摂取した場合は逆に死亡率増加につながることがあると報告した。

 NHANESのデータを調べた研究で、米国の成人の半数超が過去30日以内にサプリメントを使用していたことが報告されている。これまでに行われた、サプリメントの健康への影響を検討した研究では、全体としてサプリメントには利益も害もないことが示唆されていた。しかし、サプリメントによる過剰摂取が肺癌や前立腺癌を増やすと報告した研究もある。そこで著者らは、栄養素の摂取がもたらす利益とリスクを、用量の影響と摂取源(食品かサプリメント)の影響の両面から調べることを計画した。

 栄養素の摂取状況は、1999~2000年に実施したNHANESから、2009~2010年に実施したNHANESまで、6回分の調査データを用いた。過去30日間のサプリメント使用状況と食品摂取頻度調査から、栄養素の摂取状況を明らかにし、これをNational Death Index(NDI)の死亡統計データと照合して、総死亡率、心血管死亡率、癌死亡率との関係を検討することにした。

 対象は、過去30日間のサプリメントの使用に関する質問に回答していた20歳以上の成人3万899人で、それらのうちの2万7725人が24時間食事想起調査に1~2回参加していた。3万899人のうち、1万4763人がサプリメントを使用しており、1万6136人は使用していなかった。非使用者に比べ使用者は、年齢が高く、女性が多く、学歴が高く、世帯収入が高く、健康的な食事を摂取しており、身体活動量も多い傾向が見られた。加えて、現在喫煙者やヘビードリンカーは少なく、肥満者の割合も低かった。

 調査対象とした栄養素は、ビタミン(A、B1、B6、B12、C、D、E、K、リボフラビン、ナイアシン、葉酸など)、ミネラル(カルシウム、セレニウム、マグネシウム、カリウム、リン、鉄、亜鉛、銅)、その他(ルテイン、リコピン、食物繊維、EPA、DHAなど)だった。

 サプリメントの中で最も使用頻度が高かったのは、マルチビタミン+ミネラルだった。栄養素ごとに使用割合を推定すると、ビタミンではCが最も多く(全体の40.3%)、続いてE(38.6%)、D(37.6%)となり、ミネラルではカルシウム(38.6%)、亜鉛(34.5%)、マグネシウム(33.3%)の使用割合が高かった。

 食品からの摂取量も加えると、25種類の栄養素の総摂取量はサプリメント使用群で高かった。また、23の栄養素については、サプリメント使用群では、食事を介した摂取量もサプリメント非使用群より多かった。

 参加者全体の半数超が適切な量を摂取できていなかった栄養素は、ビタミンD、E、K、コリン、カリウムだった。過剰摂取者の割合は、どの栄養素についても5%未満だったが、ナイアシンのみ例外で、7.1%が過剰に摂取していた。

 中央値6.1年の追跡で、3613人が死亡していた。うち945人が心血管疾患死亡、805人が癌死亡だった。人口統計学的特性やライフスタイルなどの要因を補正すると、サプリメントの使用と総死亡率の減少に関連が見られた栄養素はほとんどなかった。例外はリコピンのみで、総死亡のレート比0.82(95%信頼区間0.68-0.98)、癌死亡のレート比0.66(0.46-0.96)だった。

 適切な摂取量と総死亡率の減少に関連が見られた栄養素は、ビタミンK(レート比0.79、0.70-0.90)とマグネシウム(0.85、0.74-0.98)だった。適切な摂取量と心血管死亡率の減少に関連が見られた栄養素は、ビタミンA(0.61、0.43-0.88)、ビタミンK(0.68、0.54-0.86)、銅(0.29、0.17-0.51)、亜鉛(0.50、0.36-0.71)だった。

 一方で、カルシウムの過剰摂取は、癌死亡率の上昇と関係していた。摂取量が許容上限以下の人と比較した癌死亡のレート比は1.62(1.07-2.45)だった。

 摂取源別に調べると、ビタミンKやマグネシウムに見られる総死亡率の減少は食品に由来するものだった。食品由来のビタミンKのレート比は0.79(0.69-0.92)だったが、サプリメント由来のビタミンKのレート比は0.96(0.79-1.17)で、総死亡率の減少は有意ではなかった。同様に食品由来のマグネシウムのレート比は0.78(0.65-0.93)だったが、サプリメント由来のマグネシウムでは1.00(0.87-1.14)だった。ビタミンA、ビタミンK、銅、亜鉛で見られた心血管死亡率の減少も、食品に由来するものだった。

 しかし、カルシウムの過剰摂取に見られた癌死亡率の上昇はサプリメントに起因するものだった。1000mg以上のカルシウムを含むサプリメントを使用していた人の癌死亡のレート比は1.53(1.04-2.25)だった。

 これらの結果から著者らは、サプリメントの使用は米国の成人の死亡率減少に貢献していなかったと結論している。