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全粒穀物摂取量と死亡リスクは逆相関

みなさん、こんにちは。以前に炭水化物の過剰摂取は死亡率を上昇させるという文献を紹介しました。今回の論文では、玄米や雑穀、全粒粉などの全粒穀物の摂取が多いと心筋梗塞や脳卒中、癌による死亡を減少させる傾向にあると紹介されています。日本人はもともと炭水化物摂取は多く、精製された米や小麦をいくらか全粒穀物に置き換えて摂取すると良いのかもしれません。

詳しい内容は以下を参考にしてください。
Whole grain consumption and risk of cardiovascular disease, cancer, and all cause and cause specific mortality: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies
Aune D et al.   BMJ2016 Jun 14;353:i2716

ノルウェー科学技術大学のDagfinn Aune氏らは、全粒穀物の摂取量と冠動脈疾患、脳卒中、心血管疾患、総死亡、癌死亡などの関係を明らかにするために、系統的レビューとメタアナリシスを行い、全粒穀物の利益を示した。また、そうした利益と摂取量の間には用量反応関係が認められたという。

 これまでにも、冠動脈疾患、脳卒中、心血管疾患、癌、総死亡などと全粒穀物の摂取の関係を調べた研究は複数行われているが、結論は必ずしも一致していない。推奨摂取量も国によって異なっている。そこで著者らは、様々な疾患の発症や死亡と全粒穀物の摂取量にはどのような相関があるのか(リニアな反比例か、より複雑な曲線か、プラトーがあるのか)、どれだけ摂取すれば具体的に疾患を予防したりと死亡率を減らせるのかを明らかにするため、系統的レビューとメタアナリシスを計画した。

 PubMewdとEmbaseに2016年4月3日までに登録された研究の中から、前向き研究で、全粒穀物の摂取量と、冠動脈疾患、脳卒中、心血管疾患、全ての癌、総死亡、死因別死亡の関係について検討し、調整相対リスクと95%信頼区間を報告していたものを選んだ。用量反応関係を調べるために、少なくとも穀物摂取量を3段階以上のカテゴリーに分けている研究を選んだ。

 相対リスクは、全粒穀物摂取量の最も多い群と最も少ない群を比較して計算した。またランダム効果モデルを用いて、該当するコホート研究で摂取量が1日に90g増えた場合のリスクを要約した。90gはおおよそ3皿に相当する。たとえば全粒粉パンのスライス2枚と全粒シリアル1皿、または全粒粉パン2枚と全粒ピタパン1.5枚を食べるとおおよそ90gになる。用量反応関係は、GreenlandとLongneckerの手法を用いて、直線傾向と相対リスクの自然対数から95%信頼区間を調べた。

 45件のコホート研究が条件を満たした。12件が欧州、16件が米国、9件がアジアで行われた研究だった。それぞれのコホートは24万5012人から70万5253人までの人々を分析対象としていた。冠動脈疾患を調べた研究は23件で死亡は7068例、脳卒中は15件で2337例、心血管疾患は19件で2万6243例、全ての癌は13件で3万4346例、総死亡は30件で10万726例が死亡していた。

 全粒穀物摂取量が多い人は少ない人に比べ、冠動脈疾患の発症率と死亡率の相対リスクは0.79(95%信頼区間0.73-0.86、I2=0%)だった。また摂取量を1日90g増やした場合の相対リスクは0.81(0.75-0.87、I2=9%)だった。全粒穀物摂取量と冠動脈疾患による死亡率の関係は直線ではなく、1日に3皿以上摂取する人のリスクは減少はやや緩やかになり、1日210gまではさらなるリスク減少が見られた。

 全粒穀物摂取量が多い人は少ない人に比べ脳卒中の発症率と死亡率の相対リスクは0.87(0.72-1.05、I2=32%)だった。摂取量を1日90g増やした場合の相対リスクは0.88(0.72-1.05、I2=56%)で統計的に有意なリスク減少は示せなかった。全粒穀物摂取量と脳卒中による死亡率の関係は直線ではなく、1日の摂取量が120~150gを超えると、それ以上相対リスクは減少しなくなった。

 全粒穀物摂取量が多い人は少ない人に比べ心血管疾患の発症率と死亡率の相対リスクは0.84(0.80-0.87、I2=0%)だった。摂取量を1日90g増やした場合の相対リスクは0.78(0.73-0.85、I2=40%)だった。全粒穀物摂取量と心血管死亡率の関係は直線ではなかったが、まったく食べない人や1日の摂取量が50g以下の人に比べ、それ以上食べている人の相対リスク減少は直線より緩やかだが、1日200gまで減少し続けたた。

 全粒穀物摂取量が多い人の全ての癌による死亡率の相対リスクは0.89(0.82-0.96、I2=72%)だった。摂取量を1日90g増やした場合の癌死亡の相対リスクは0.85(0.80-0.91、I2=37%)だった。全粒穀物摂取量と癌死亡率の関係は逆相関していた(多く食べるほど癌死亡が減る)。全死因による死亡率の相対リスクは、0.82(0.77-0.88、I2=83%)、摂取量を1日90g増やした場合の全死亡率の相対リスクは0.83(0.77-0.90、I2=83%)だった。全粒穀物摂取量と全死亡率の関係は直線ではなかったが、緩やかに減少し続け1日225gで最もリスクが低かった。