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SGLT-2阻害薬の使用によっても尿路感染症を増やさない

こんにちは、今回もSGLT2阻害薬に関する文献を紹介します。SGLT2阻害薬は尿に糖を排泄させて血糖値を改善する薬です。尿中の糖の濃度は高くなるため細菌が繁殖し尿路感染症を生じやすくなる可能性が懸念されます。今回の論文ではSGLT2阻害薬によって特に尿路感染症を生じやすくなることはないと結論されています。

論文の内容は以下を参考にしてください。
Sodium-Glucose Cotransporter-2 Inhibitors and the Risk for Severe Urinary Tract Infections: A Population-Based Cohort Study
Dave CV et al.   Ann Intern Med  2019 Aug 20;171(4):248-256

米国Harvard大学医学部のChintan V. Dave氏らは、米国の民間医療保険データベースを利用して、SGLT-2阻害薬の使用を開始した2型糖尿病患者と、DPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬の使用を開始した患者の重度の尿路感染症(UTI)リスクを比較するコホート研究を行い、SGLT-2阻害薬はUTIリスクを増加させていなかったと報告した。

 SGLT-2阻害薬は尿糖を増加させるため、細菌の増殖を容易にする可能性があると考えられている。しかし、SGLT-2阻害薬の使用と重症UTIの関係について検討したメタアナリシスでも一貫した結果は得られていない。FDAは市販後調査の報告例に基づいて、2015年に重症UTIの警告を追加したが、敗血症を伴うUTIはまれなイベントであるため、通常規模の臨床試験では発症率の違いを検出するのが難しい。

 そこで著者らは、大規模なコホート研究でSGLT-2阻害薬の使用により重症UTIリスクが上昇するのかどうかを検討するため、DPP-4阻害薬またはGLP-1受容体作動薬の使用を開始した2型糖尿病患者とUTIリスクを比較することにした。

 コホート作成には、米国の企業医療保険加入者の情報を登録しているデータベースIBM MarketScanとOptum Clinformatics Data Martを利用した。2つのデータベースから、年齢18歳以上で、2013年3月から2015年9月までに新たに薬物療法を開始した2型糖尿病患者を抽出した。組み入れ前の180日間には治療薬を使用していないことで、新規の薬物療法開始を担保した。ナーシングホームやホスピス利用者、1型糖尿病や妊娠糖尿病患者、癌、HIV感染、腎不全の患者は組み入れから除外した。水腎症があるなど、UTIのリスクが高い患者も除外した。

 コホート1では、SGLT-2阻害薬を使い始めた患者とDPP-4阻害薬を使い始めた患者を、コホート2はSGLT-2阻害薬を使い始めた患者とGLP-1受容体作動薬を使い始めた患者を比較することにした。ベースライン時点で91種類の共変数を用いた傾向スコアがマッチする患者の組み合わせを選び出して、コホートに組み入れることにした。対象者は、追跡終了予定日(2015年9月30日)、治療薬の変更、治療の中止(最後の処方から30日以上の間隔が空いた)まで追跡した。

 主要評価項目は、重症UTIイベント(UTIによる入院、UTIと敗血症による入院、腎盂腎炎による入院を合わせた複合イベント)とした。副次評価項目は、複合イベントの各項目、外来でのUTI治療(外来でのUTIの診断と抗菌薬治療)と、重症度を限定しないあらゆるUTI関連の入院とした。

 コホート1候補は、SGLT-2阻害薬の使用を開始した27万762人とDPP-4の使用を開始した44万970人となり、コホート2候補は、SGLT-2阻害薬の使用を開始した27万3617人とGLP-1受容体作動薬の使用を開始した21万1701人になった。条件を満たした患者を傾向スコアマッチングし、計12万3752人をコホート1に、11万1978人をコホート2に組み入れた。

 コホート1では、重症UTIはSGLT-2阻害薬群の61人に発生、発生率は1000人・年当たり1.76だった。一方、DDP-4阻害薬群では57人に重症UTIが発生、1000人・年当たりの発生率は1.77だった。ハザード比は0.98(95%信頼区間0.68-1.41)で両群に有意差はなかった。

 コホート2では、SGLT-2阻害薬群の73人に重症UTIが発生、1000人・年当たりの発生率は2.15で、GLP-1受容体作動薬群では87人に発生、発生率は2.96となり、ハザード比は0.72(0.53-0.99)で、SGLT-2阻害薬群の方が少ないという結果だった。

 副次評価項目の結果でも、SGLT-2阻害薬は対照薬に比べUTIリスクを上昇させていなかった。外来でのUTI治療のハザード比は、コホート1では0.96(0.89-1.04)、コホートで2は0.91(0.84-0.99)で、あらゆるUTI関連入院のハザード比は、コホート1では0.68(0.54-0.87)、コホート2では0.78(0.62-0.99)になった。

 サブグループ解析で年齢、性別、フレイル、使用薬(カナグリフロジンとダパグリフロジン)で患者を層別化しても、コホート全体と同様の結果だった。

 これらの結果から著者らは、大規模な2型糖尿病患者コホートの日常診療データを分析した結果、SGLT-2阻害薬使用者のUTIリスクは、他の糖尿病治療薬と同様だったと結論している。