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甲状腺機能低下症の健康転帰に高TSH濃度が悪影響

こんにちは、本日は甲状腺に関する話題です。甲状腺ホルモンが少ないと下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度は上昇します。以前からTSH上昇は認知症のリスクなどとして知られていましたが今回の文献ではTSHが高いと虚血性心疾患や心不全のリスクが上昇すると報告しています。高齢者に対する軽度の甲状腺機能低下に対して積極的なホルモン補充療法を勧めない報告もありますが、やはり不足しているホルモンは補充したほうがよさそです。

Thyroid replacement therapy, thyroid stimulating hormone concentrations, and long term health outcomes in patients with hypothyroidism: longitudinal study.
Thayakaran R, et al.  BMJ 2019;366:l4892

 甲状腺機能低下症16万2369例の患者記録データを対象に、甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度と長期健康転帰の関連を後ろ向きコホート研究で検討した。

 基準としたTSH濃度(2-2.5mIU/L)に比べて、高TSH濃度(10mIU/L超)では虚血性心疾患および心不全のリスクが上昇した(ハザード比:1.18、95%CI 1.02-1.38、P=0.03、同:1.42、1.21-1.67、P<0.001)。これに対し、低TSH濃度では心不全に対する予防効果が見られた(ハザード比:TSH濃度0.1mIU/L未満で0.79、0.64-0.99、P=0.04、0.1-0.4mIU/Lで0.76、0.62-0.92、P=0.006)。高TSH濃度(10mIU/L超)では、死亡率上昇(同2.21、2.07-2.36、P<0.001)および脆弱性骨折リスク上昇(同1.15、1.01-1.31、P=0.03)が観察された。