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肥満との関連エビデンスがある癌は11種類

みなさん、こんにちは。以前に糖尿病とがんの関係につてブログに掲載いたしましたが今回は肥満とがんの関連についての文献を紹介します。これまでの研究データから11種類の癌(食道腺癌、多発性骨髄腫、胃噴門部癌、結腸癌、直腸癌、胆道系癌、膵臓癌、乳癌、子宮内膜癌、卵巣癌、腎臓癌)は肥満との関連があるようです。糖尿病や高血圧、高脂血症といった代謝異常や心血管疾患発症を防ぐためだけでなく、癌の発症を予防するといった観点からも積極的に体重管理を行い肥満を改善することが重要であると思われます。

論文の詳細:
Adiposity and cancer at major anatomical sites: umbrella review of the literature
M Kyrgiou et al.  BMJ. 2017 Feb 28;356:j477.

肥満と癌の関係を示したメタアナリシスは複数あるが、研究間の不均一性、内在するバイアスや交絡因子などが、肥満が癌に及ぼす影響の過大評価につながっている可能性がある。英国Imperial College LondonのMaria Kyrgiou氏らは、既存のエビデンスについて評価し、その質を検討するためにアンブレラ・レビューを行ったところ、11種類の癌は肥満と関連する強力なエビデンスがあったと報告した。

 著者らは、肥満と癌発症または癌死亡の関係に関するエビデンスの強度と妥当性について評価するために、系統的レビューとメタアナリシスのデータを集めて分析するアンブレラ・レビューを行った。PubMed、Embase、コクラン・レビューに2015年5月までに登録されていた研究などから、肥満の指標(BMI、ウェスト周囲長、ヒップ周囲長、ウェスト・ヒップ比、体重、体重増、減量手術による体重減少)と癌発症または癌死亡の関係について検討した観察疫学研究を対象とする系統的レビューまたはメタアナリシスを抽出した。個々の研究データについて、相対リスク、95%信頼区間、症例数と対照数、母集団などの数字を明記していないメタアナリシスは除外した。

 それぞれのメタアナリシスが報告していた肥満と癌の関係を示すエビデンスは、強力、強く示唆、示唆的、薄弱の4段階に分類した。例えば「強力なエビデンス」は、ランダムエフェクトモデルのメタアナリシスのP値が10-6未満、癌の症例が1000例以上含まれ、不均一性のI2統計量が50%未満、95%予測区間に0が含まれず、小規模な研究の過剰な効果や有意差過剰バイアスが示唆されないこと、などとした。

 条件を満たす204件のメタアナリシスを同定した。それらは371件のコホート研究、134件の症例対照研究、2件の横断研究を含んでいた。177件のメタアナリシスは癌の症例が1000件以上含まれていた。204件のうち196件は癌の発症について、8件が癌死亡について肥満との関係を検討していた。全部で36種類の原発癌とそれらのサブタイプが検討されていた。

 95件のメタアナリシスが肥満との関係を連続変数で検討しているため、主要な分析対象になった。95件のうち、強力なエビデンスを提供していたのは12件(13%)のみで、それらは9種類の癌の発症との関係を示していた。BMIの上昇との関係を検討していた10件は、食道腺癌、男性の結腸癌と直腸癌、胆道系癌(胆嚢、肝外胆管、胆膵管膨大部の癌)、膵臓癌、閉経前の女性の子宮内膜癌、腎臓癌、多発性骨髄腫の発症リスク上昇に関係していた。BMIが5kg/m2増加するごとに、男性の直腸結腸癌は9%リスク上昇し(相対リスク1.09、95%信頼区間1.06-1.13)、胆道系の癌は56%リスク上昇する(相対リスク1.56、95%信頼区間1.34-1.81)。

 また、体重増加はホルモン補充療法歴の無い閉経女性の乳癌と、ウェスト・ヒップ比の上昇は子宮内膜癌の発症リスク上昇に関係していた。ホルモン補充療法歴の無い閉経女性の乳癌の相対リスクは、成人期の体重が5kg増加当たり1.11(1.09-1.13)、子宮内膜癌の相対リスクは、ウェスト・ヒップ比が0.1上昇当たり1.21(1.13-1.29)だった。

 肥満の評価に連続変数だけでなくカテゴリー尺度を用いていた研究を加えると、さらに5通りの関係で強力なエビデンスがあった。すなわち、体重増加と大腸癌発症、BMI高値と胆嚢癌・胃噴門部癌・卵巣癌の発症、および多発性骨髄腫による死亡率との関係を示していた。症例対照研究のデータを加えると、コホート研究だけでは関連が弱いと判定された2種類の関連(BMIとメラノーマ、髄膜腫)も、強力なエビデンスが示唆された。

 これらの結果から著者らは、肥満と癌の関係を支持する強力なエビデンスがあったのは、11通りの癌(食道腺癌、多発性骨髄腫、胃噴門部癌、結腸癌、直腸癌、胆道系癌、膵臓癌、乳癌、子宮内膜癌、卵巣癌、腎臓癌)だった。それ以外の癌との関係も真実である可能性はあるが、不確実な部分が残っていたと結論している。