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飲酒量の多い喫煙者では熱いお茶を飲むと食道癌のリスクが増加 する

こんにちは、高温のお茶の摂取と食道癌のリスクについての文献を紹介します。タバコもお酒も飲まない人は熱いお茶を飲んでも食道癌リスクは増えませんが、どちらか一方でも嗜好があると食道がんのリスクは上昇し、両方とも嗜好ありだとさらにリスクは上昇するようです。

Effect of Hot Tea Consumption and Its Interactions With Alcohol and Tobacco Use on the Risk for Esophageal Cancer: A Population-Based Cohort Study
Yu C et al. Ann Intern Med. 2018 Apr 3; 168(7): 489–497.

中国北京大学のCanqing Yu氏らは、既知の食道癌危険因子である飲酒と喫煙を考慮して、高温のお茶の摂取が食道癌リスクに及ぼす影響を検討したところ、飲酒も喫煙もしない人では熱いお茶を毎日飲んでも食道癌リスクは上昇しないが、飲酒量が多い人と現在喫煙者では、熱いお茶が食道癌リスクをさらに上昇させると報告した。

 国際癌研究機関(IARC)は、65度を超える温度のお茶は、人に対しておそらく発癌性があるとの見解を示した。しかし、高温のお茶の摂取と食道癌の関係を示すデータは研究によりまちまちだ。中国は食道癌の罹患率が非常に高く、熱いお茶の摂取に加えて、特に男性の飲酒と喫煙の頻度が高い。そこで著者らは、高温のお茶の摂取が、既知の危険因子である飲酒、喫煙と共に、食道癌リスクに及ぼす影響を検討するために、前向きコホート研究であるChina Kadoorie Biobank(CKB)の参加者の情報を得て分析した。

 CKBは、2004~08年に中国の10の地域で参加者を募集したコホート研究で、51万2891人が登録している。今回の研究では、ベースラインで既に癌と診断されていた人と、お茶の量や飲酒量を減らした人と、禁煙した人を除外し、45万6155人(平均年齢は50.9歳で36%が男性)を分析対象とした。

 それらの人々に、ベースラインで、過去1年間の茶の摂取頻度を尋ねた。まず、一切飲まない、時々飲む、特定の季節だけ飲む、1週間に1回未満、週に1回以上、という選択肢を提示し、週に1回以上飲む人には、週に何日飲むか、1回の摂取容量、1回に使用する茶葉の量、最も多く飲む茶の種類(緑茶、ウーロン茶、紅茶のいずれか)を尋ねた。毎日飲む人々には、通常摂取する茶の温度(室温、温かい、熱い、火傷しそうな温度)、茶を飲み始めた年齢も尋ねた。平均で2.6年の間隔を開けて、同じ質問表に回答してもらった。

 喫煙の経験者には、使用した量と種類を答えてもらい紙巻きタバコに換算した(紙巻き1本=葉巻0.5本=タバコの葉1g)。過去の喫煙者には、吸っていた年数と止めた時期も回答してもらった。禁煙してから6カ月未満の場合は、現在喫煙者の扱いとした。週に1回以上飲酒する人には、飲む頻度と酒の種類を答えてもらい、エタノール量に換算した。

 社会人口学的要因(年齢、性別、教育、婚姻、世帯所得)、生活習慣(活動度、食事内容)、閉経前か後か、癌の家族歴、に関する情報も調べた。主要評価項目は食道癌の診断とし、食道癌と診断された日、死亡、または2015年12月31日まで追跡した

 45万6155人のうち、毎日茶を飲んでいたのは男性の42.1%と女性の16.1%だった。男女ともに火傷しそうなほど熱いお茶を毎日飲む人では、お茶を飲む回数が多く、使用する茶葉の量も多かった。さらに、現在喫煙者と、毎日飲酒者の割合も高かった。

 中央値9.2年(410万人・年)の追跡で1731人(男性が1106人、女性は625人)が食道癌を発症していた。年齢、学歴、配偶者の有無、世帯収入、身体活動量、食物摂取頻度、BMI、癌家族歴、閉経前か後かで補正した、毎日お茶を飲む人の食道癌リスクは、男性でのみ、お茶を飲む頻度が週に1回未満の人々より有意に高くなっていた。また、お茶の温度が高いほど、リスク上昇は大きかったが、喫煙と飲酒を補正に加えると、上昇幅は小さくなった。女性では、毎日熱いお茶を飲む人でも、お茶を飲む頻度が週1回未満の人と食道癌のリスクに差はつかなかった。

 茶の摂取が週1回未満で1日の飲酒量がアルコール15g未満の人々と比較すると、熱湯のようなお茶を毎日飲み、1日15g以上のアルコールを摂取する人の食道癌のリスクは5倍(ハザード比5.00、95%信頼区間3.64-6.88)だった。同様に、お茶を飲む頻度が週1回未満の非喫煙者に比べ、熱湯レベルの茶を毎日飲む現在喫煙者のハザード比は2.03(1.55-2.67)だった。

 そこで、毎日飲む茶の温度と飲酒、喫煙の全てを組み合わせて分析した。毎日熱いお茶を飲む人でも、アルコール摂取量が1日15g未満の非喫煙者なら、どれも嗜まない人を基準にしたハザード比は1.05(0.74-1.48)だった。熱いお茶を飲み飲酒量が少ない喫煙者はハザード比1.56(1.21-2.02)、熱いお茶を飲み飲酒量の多い非喫煙者ではハザード比2.27(1.16-4.45)、熱いお茶を飲み飲酒量の多い喫煙者の3要素が揃うとハザード比5.01(4.00-6.28)になった。

 これらの結果から著者らは、飲酒や喫煙を伴う場合、熱いお茶を毎日のむ行為は食道癌のリスクを有意に上昇させると結論している。