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薬剤性ANCA関連血管炎の原因薬リストを更新

こんにちは、当院では甲状腺疾患の診断・治療を積極的に行っております。甲状腺疾患のなかでバセドウ病は比較的よく遭遇する疾患で治療は主に抗甲状腺薬を服用します。抗甲状腺薬の副作用としてよく知られているのは顆粒球減少や肝障害ですが稀にANCA関連血管炎を生じることがあります。ANCA関連血管炎は肺や腎臓などの臓器障害を引き起こすことがあるため、薬剤が原因でこの血管炎を生じた場合にはすみやかに薬を中止する必要があります。そのためバセドウ病の治療中の方は定期的にこうした副作用がないかどうかチェックしていく必要があります。当院でも甲状腺ホルモン値のコントロールを行いながら副作用が起きていないかを定期的に確認しています。
さて、今回の論文は副作用にANCA関連血管炎がある薬剤リストが更新されたという内容です。

A worldwide pharmacoepidemiological update of drug-associated ANCA-associated vasculitis at the time of targeted therapies.
Deshayes S, et al.   Arthritis Rheumatol. 2021 Jun 23. 

 世界保健機関の医薬品安全性監視データベースVigiBaseを用いて薬剤性抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎の最新データを収集し、データマイニングアプローチを使用して分析した。

 IC025(95%信用区間の下限値)が正の値の薬剤15品目が関与するANCA関連血管炎の重複を避けて抽出した個別症例安全性報告483件を分析した結果、女性264例(女性371例中の71.2%)がANCA関連血管炎を発症し、発症年齢中央値は62歳で、被疑薬の導入からANCA関連血管炎発症までの期間中央値は9カ月だった。472件が重篤と判定され、43件が死亡した。不均衡報告の高い薬剤はヒドララジン、プロピルチオウラシル、チアマゾール、ソホスブビル、ミノサイクリン、carbimazole(甲状腺機能亢進症治療薬)、ミラベグロン、ニンテダニブだった。